原田靖博の内外金融雑感
アジアの銀行は、急速にIT装備を強化
2015/7/1
フューチャーアーキテクト株式会社
取締役
経済・金融研究所長
原田靖博
ICT(Information and Communication
Technology)の進歩の度合は、近年一段と加速化しており、金融業務もこれを取り入れるかたちで、急速に変容を遂げている。
米国では、インターネット上で資金の借り手と投資家を直接結び付けるかたちの金融業務(peer to peer
lending)が急速に発展している(“Lending
Club”がその典型で、2014年12月にニューヨーク証券取引所に上場し9億ドルを調達、2015年3月には中国のインターネット通販大手のアリババと、同5月にはGoogleと業務提携)ほか、暗号通貨Bitcoinを送金・決済手段として本格的に取込む動き(米国大手投資銀行Goldman
Sachsも資本投入)も見られる。
こうした傾向は、アジアにおいても同様に窺われており、それらのうち特徴的な動きを、先般香港で開催された“Asian Banker
Summit 2015”(2015年4月14日〜16日、Asian
Banker誌の主催で、毎年東南アジアの主要都市で持ち回り開催。民間ベースの会議ながら、開催地の金融監督当局、中央銀行のトップも参加。本年は香港通貨庁のChan長官が基調講演を行った)の発表のなかから、以下に紹介する。
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モバイルバンキングの時代到来
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モバイルバンキングとは、電話・高性能パソコン・カメラを一体化したスマートフォンを中核として展開される金融業務で、何時でも何処でもインターネットにアクセスできる点で、デスクトップパソコンあるいはラップトップパソコンをベースとしたインターネットバンキングと比べて優位性があり、消費者満足度が高い。
資金決済手段としても、現金、小切手、クレジット(デビット)カードがさらに進化したものと位置付けられる。
これは音楽媒体が、ビニール製のレコードディスクからカセットテープ、CDと進化して、インターネット利用のライブ・ストリーミングに到達したことと同様に考えられている。
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モバイルペイメントの取引額が、2009年に250億ドルであったのが、2014年には3,525億ドルとなり、3年後の2017年には7,210億ドルに倍増する見込みと報告された。モバイルバンキングは、世界的にブームを呈しているといえよう。
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近年(2011年から2014年まで)のモバイルバンキングの成長度合をみると、北米(米国・カナダ)が2.7倍、日本・韓国・台湾は3.2倍であるのに対し、東南アジア(アセアン諸国)は5.2倍と急速に伸長。今後も、東南アジアでの大幅な成長・発展が見込まれる。
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Asian Banker
Summit参加を機に訪問したインドネシア・香港・フィリピンの大手銀行でも、モバイルバンキングに熱心に取り組んでいる。