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第33回 犯罪の被害者と加害者その4 : 被害者給付金制度

大塚 正民
大塚正民 法律会計事務所
 

「犯罪被害者等基本法」は、「犯罪被害者等の権利利益の保護を図ることを目的」とする法律です。この目的達成のための具体的施策としては、現在のところ、3つの制度があります。@「被害給付金制度」、A「被害者参加制度」、B「損害賠償命令申立て制度」です。今回は、「被害者給付金制度」、次回は、「被害者参加制度」、次々回は、「損害賠償命令申立て制度」をそれぞれ取り上げます。
 
2つの被害者給付金制度
「被害者給付金」には、現在のところ、2つの種類があります。1つは、いわゆる「支援法
(注1)」に基づく「犯罪被害者等給付金」です。もう1つは、いわゆる「回復法(注2)」に基づく「被害回復給付金」です。
 
犯罪被害者等給付金
「支援法」は、犯罪被害者等(被害者本人またはその遺族)を経済的に「支援」することを目的
(注3)とし、3つの種類の犯罪被害者等給付金を定めています。@被害者本人が死亡した場合にその遺族に支給される「遺族給付金」、A被害者本人が生存していても重い障害が残った場合にその被害者本人に支給される「障害給付金」、B被害者本人が重傷病を負った場合にその被害者本人に支給される「重傷病給付金」です(注4)
犯罪被害者等給付金の一種ですが、特別なものとして、「オウム犯罪被害者等給付金」があります。「オウム真理教犯罪被害者等を救済するための給付金の支給に関する法律(平成20年6月18日法律第80号)」に基づくものです
(注5)
 
被害回復給付金
「回復法」は、国が犯人から財産を剥奪し、その剥奪した財産を被害者に配分することによって被害を「回復」させることを目的としています
(注6)。平成18年12月1日から、組織犯罪処罰法の改正により,詐欺罪や高金利受領罪といった犯罪行為により犯人が得た財産は,その犯罪が組織的に行われた場合やいわゆるマネー・ロンダリングが行われた場合には,国が犯人から剥奪(没収・追徴)することができるようになりました。このようにして犯人から剥奪した「犯罪被害財産」を金銭化して「給付資金」として保管し,そこからその事件により被害を受けた人々に給付金を支給する制度です(注7)
  

脚注
 
注1 正式の名称は、「犯罪被害者等給付金の支給等による犯罪被害者等の支援に関する法律」です。この法律は、当初、「犯罪被害者等給付金支給法(昭和55年5月1日法律第号)」として制定されましたが、平成13年7月1日に「犯罪被害者等給付金の支給等に関する法律」と名称変更され、さらに平成20年7月1日に現在の名称に変更されました。
 
注2 T正式の名称は、「犯罪被害財産等による被害回復給付金の支給に関する法律(平成18年6月21日法律第87号)」です。
 
注3 「支援法」第1条では、「犯罪行為により不慮の死を遂げた者の遺族または重傷病を負いもしくは障害が残つた者の犯罪被害等を早期に軽減するとともに、これらの者が再び平穏な生活を営むことができるよう支援するため、犯罪被害等を受けた者に対し犯罪被害者等給付金を支給し、および当該犯罪行為の発生後速やかに、かつ、継続的に犯罪被害等を受けた者を援助するための措置を講じ、もつて犯罪被害等を受けた者の権利利益の保護が図られる社会の実現に寄与することを目的とする。」と定めています。
 
注4 警察庁のサイトhttp://www.npa.go.jp/higaisya/shien/kyufu/seido.htmを参照。なお、毎日新聞平成21年3月23日26面の記事「ニッポン密着 土浦8人殺傷1年 被害給付金打ち切り 一生不安と生きる」を参照。
 
注5 庶民の弁護士 伊東良徳 「オウム犯罪被害者給付金申請の実情」http://www.shomin-law.com/kakudouAumhigaikyuuhukinsinseinojitujo.html
参照。なお、参議院議員 加賀谷健のサイトhttp://www.senkyo.janjan.jp/report/0802/00002194.htmlを参照。
 
注6 「回復法」第1条では、「組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律 (平成11年法律第136号。以下「組織的犯罪処罰法」という。)第13条第2項 各号に掲げる罪の犯罪行為(以下「対象犯罪行為」という。)により財産的被害を受けた者に対して、没収された犯罪被害財産、追徴されたその価額に相当する財産および外国譲与財産により被害回復給付金を支給することによって、その財産的被害の回復を図ることを目的とする。」と定めています。
 
注7 法務省のサイト http://www.moj.go.jp/KEIJI/keiji36.htmlを参照。なお、検察庁のサイトhttp://www.kensatsu.go.jp/higaikaihuku/index.htm#topを参照。
 
   

 


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