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大塚正民の考古学と考古学の広場

 第40回 国際法務その6: 外国為替法

大塚 正民
大塚正民 法律会計事務所
 

この度の「国際法務シリーズ」で2番目に取り上げる「法律分野」は「外国為替法」という「法律分野」です。その中核となる法律(中核法律)は「外国為替及び外国貿易法(注1)」です。この中核法律の下で主として問題となるのが、「国際的なお金のやりとり」です。「お金のやりとり」、つまり、「お金を相手に支払う」または「お金を相手から受取る」ことを、この中核法律では一括して「支払等」と称しています。「外国へ向けた支払い(注2)」、「外国からの支払いの受領(注3)」、「日本国内において日本の居住者と日本の非居住者とのお金のやりとり(注4)」および「日本国外において日本の居住者と日本の非居住者とのお金のやりとり(注5)」などをすべて一括して「支払等」と称している訳です。そして「支払等を行う者」自身が、「これら支払等の内容、実行の時期その他政令で定める事項(注6)を主務大臣(注7)に報告しなければならない。」とされていますが、実際には、銀行などの金融機関が関与することが多いので、「支払等を行う者」が「銀行」などの金融機関にまず「報告」し、「銀行」などの金融機関が「主務大臣」に「報告」することになっています(注8)。ただし、この「報告」は、原則として、「3,000万円以下の支払等」の場合は、不要とされています(注9)。それでは「3,000万円以下の支払等」の場合は、そもそも「政府に対する報告」は一切不要かというと、実際には、そうではありません。「内国税の適正な課税の確保を図るための国外送金等に係る調書の提出等に関する法律(注10)」という長い名前の法律(国外送金等調書制度法律)が、平成10年4月1日から施行されているからです。上記の「中核法律」が、原則として、「財務大臣に対する報告」を義務付けているのに対し、この「国外送金等調書制度法律」は、「税務署長に対する報告」を義務付けており、しかも、前者の「報告義務」は3,000万円以下の場合は免除されますが、後者の「報告義務」は100万円以下の場合しか免除されません。この「国外送金等調書制度法律」は、つぎのような仕組みになっています。

@ 目的:納税義務者の対外取引および国外財産を国税当局が把握できるようにすることで、納税義務者の所得税、法人税、相続税などの適正な課税を確保する。
A 国外送金等:「国外送金」のみならず「国外からの送金等の受領」も含みます。
B 国外送金等の告知書:国外送金等をする者は、原則として(注11)、「国外送金等の告知書(注12)」を「国外送金等を係る金融機関」に提出する義務があります。
C 国外送金等調書:「国外送金等を係る金融機関」は、原則として(注13)、「国外送金等調書(注14)」を「所轄税務署長」に提出する義務があります。


脚注
 
注1 「外国為替及び外国貿易法」昭和24年12月1日法律第228号。
 
注2 たとえば、外国の出版社から購入した外国書籍の代金支払い。
 
注3 たとえば、外国の親戚から贈与された金銭の受取り。
 
注4 たとえば、外国から日本に短期旅行に来ている親戚から贈与された金銭の受取り。
 
注5 たとえば、外国の出版社から購入した外国書籍の代金支払いのために、購入者の外国銀行にある預金口座から外国の出版社の外国銀行にある預金口座への送金。
 
注6 「外国為替及び外国貿易法」第55条第1項は、「居住者若しくは非居住者が本邦から外国へ向けた支払若しくは外国から本邦へ向けた支払の受領をしたとき、又は本邦若しくは外国において居住者が非居住者との間で支払等をしたときは、・・・当該居住者若しくは非居住者又は当該居住者は、・・・これらの支払等の内容、実行の時期その他政令で定める事項を主務大臣に報告しなければならない。」と規定しています。
 
注7 「主務大臣」は、原則として、「財務大臣」ですが、例外的に「経済産業大臣」の場合もあります。「外国為替及び外国貿易法における主務大臣を定める政令」(昭和55年10月11日政令第259号)第3条の3は、「法第55条における主務大臣は、・・・については経済産業大臣とし、その他の支払等に係る報告については財務大臣とする。」と規定しています。
 
注8 「外国為替及び外国貿易法」第55条第2項は、「前項の規定による報告は、当該報告に係る同項の支払等が銀行等が行う為替取引によってされるものである場合には、・・・当該銀行等を経由してするものとする。」と規定しています。
 
注9 「外国為替令」(昭和55年10月11日政令第260号)第18条の4第1項第1号。「外国為替の取引等の報告に関する省令」(平成10年3月19日大蔵省令第29号)第1条第1項第2号。
 
注10 「内国税の適正な課税の確保を図るための国外送金等に係る調書の提出等に関する法律」 平成9年12月5日法律第110号。
 
注11 例外は、「特定送金」および「特定受領」、つまり「本人口座を経由する国外送金等」です。「内国税の適正な課税の確保を図るための国外送金等に係る調書の提出等に関する法律」第3条第2項。 
 
注12 行為者の名称および住所ならびに送金原因などを記載した書面を意味します。「内国税の適正な課税の確保を図るための国外送金等に係る調書の提出等に関する法律」第3条第1項。
 
注13 例外は、「100万円以下の国外送金等」です。「内国税の適正な課税の確保を図るための国外送金等に係る調書の提出等に関する法律施行令」(平成9年12月17日政令第363号)第8条第1項。
 
注14 行為者たる顧客の名称および住所ならびに送金原因などを記載した書面(または光ディスク)を意味します。「内国税の適正な課税の確保を図るための国外送金等に係る調書の提出等に関する法律」第4条第1項および第2項。
 
   

 


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更新日:2012/10/30