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大塚正民の考古学と考古学の広場

第53回 国際法務その19: 国際訴訟制度その3
:第4の主要な問題点としての証拠収集および第5の主要な問題点としての準拠法

大塚 正民
大塚正民 法律会計事務所
 

 
問題点(日本語) 英語での表現 どういう問題か
証拠収集 Taking Evidence どのようにして訴訟に用いる証拠を収集するか
準拠法 Applicable Law どこの国の法律を適用するか

第4の主要な問題としての証拠収集
国際訴訟の場合、証拠収集の手段として、実務上とくに問題になるのが、「証拠収集条約」と「アメリカのディスカバリー制度」です

  1. 「証拠収集条約」とは、「ハーグ条約」の1つで、「民事又は商事に関する証拠の収集に関する条約 (The Convention on the Taking Evidence Abroad in Civil or Commercial Matters)」を指します。日本は、現在のところ、このハーグ条約を批准していませんから、日本での民事訴訟においては、この条約を利用することは出来ません。したがって、現在のところ、実例は余り多くありませんが、外国にいる証人の証言を取る必要がある場合には、その外国の裁判所またはその外国に駐在する日本の領事に嘱託して行うことになっています(注1)

  2. 「アメリカのデスカバリー制度」とは、アメリカの民事訴訟手続における「開示制度(discovery)」のことで、法廷での正式裁判が行われる前に、法廷外で当事者が互いに、事件に関する情報(証拠を含めて)を開示し、収集する制度です。アメリカでの民事訴訟の場合、このデスカバリー制度は重要な役割を果たしますが、最近では、アメリカ外での民事訴訟または仲裁においても、アメリカのデスカバリーの利用の可能性が高まっています(注2)
     

第5の主要な問題としての準拠法
民法968条1項は、「自筆証書によって遺言するには、遺言者が、その全文、日付および氏名を自書し、これに印を押さなければならない。」と定めています。それでは、米国のA州に居住している日本人が「パソコンで書いた英文の遺言書をプリント・アウトしたものに署名しただけの遺言書」は、日本の裁判所で「有効と認められる」でしょうか? 日本法が準拠法であるとすれば、多分、無効となるでしょう。ところが、この場合には「遺言の方式の準拠法に関する法律」(昭和39年6月10日法律第100号)が適用される可能性があります。この法律は、「遺言の方式の準拠法に関する法律の抵触に関する条約」、つまり、1961年10月5日に締結され、1964年6月3日に日本が批准した「ハーグ条約」を国内法化したものです。この国内法の2条によれば、この遺言書が「行為地または住所地である米国のA州の法律によれば有効である場合には」日本においても有効とされます。つまり、この遺言書は、複数の準拠法のどれか1つの準拠法によって有効とされれば、日本においても有効となる訳です。

  

脚注
 
注1 民事訴訟法184条1項「外国においてすべき証拠調べは、その国の管轄官庁又はその国に駐在する日本の大使、公使若しくは領事に嘱託してしなければならない。」
 
注2 浜辺陽一郎、日米国際商事仲裁のための外国裁判所による証拠収集の可能性、早稲田法学83巻3号131頁(2008)。
 
   
   
   

 


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更新日:2012/10/30