投資詐欺として歴史的かつ世界的に有名なのがポンジー・スキームという投資詐欺です。アメリカにおける信託分野および資産証券化分野の研究者として高名なフランケル女史注1の最近の著書「ポンジー・スキームの謎(詐欺師たちと被害者たちの歴史と分析)注2」には、つぎのようにあります。−
:ポンジー・スキームという投資詐欺とは何か?それはどのようにして行われるのか?それの影響を受けるのは誰か?そして、それは何故、人々の興味を引き、人々に畏怖され、人々を怒らせ、人々に苦痛を与えるのか?それは、チャールス・ポンジーという1920年代初期にこのような投資詐欺を実行した男の名前からそう呼ばれている。ポンジー・スキームという投資詐欺は、投資家たちをつぎのようにして騙す。その詐欺師は投資家たちに対し異常に高い利益をもたらす投資を提供し、リスクは全くないか、低いリスクであることを約束する。その利益はなんらかの事業、製品、または、融資計画から生み出されると考えられている。ところが実際には、なんらの事業、製品、または、融資計画も存在しない。投資家たちに利益として、ときには投資元本として支払われる資金は、同じような約束を受けた新しい投資家たちから調達された投資資金である。
ポンジー・スキームでは、すべての投資家たちが損失を蒙るのであろうか?必ずしもそうではない。投資家たちの中には、その詐欺師と同じように利益を得るものもいる。しかし、ほとんどの投資家たちは多額の損失を蒙る。ある1つの破産裁判所の判決によると、あるポンジー・スキームがどのように損失および利益を配分したかがつぎのように示されている。すなわち、そのポンジー・スキームが評判となってからの時期である1981年6月12日以降、924人の投資家たちが本件債務者(詐欺師)に対し400萬ドル以上を投資資金として預けたが、結局は1ドルも受取らず全額が損失となった。ところが当初の第1グループの投資家たちは、投資資金の元本に加えて200%の利益を受取った。少し後の第2グループの投資家たちは、投資資金の元本に加えて150%の利益を受取った。更に第3グループの投資家たちは、投資資金の元本に加えて100%の利益を受取った。第4グループ、第5グループ、その後の各グループと続き、そして結局は最終のグループとなった投資家たち注3は、元本も利益もゼロとなったのである。−
フランケル女史のこの近著の帯紙の内容紹介によりますと、高名な学者であるフランケル女史は、「投資詐欺はどうして無くならないのか注4」を歴史的に研究した結果、「投資詐欺を防止するための驚くべき解決策」を提案している、ということです。そこで、以下何回かにわたって、フランケル女史のこの近著を読むことにしましょう。願わくは、絶対に投資詐欺の犠牲者にならない秘訣を得たいものですね。
脚注
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注1
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タマー・フランケル(Tamar
Frankel)女史(80代の半ばと思われますが、女性であるためか正確な年齢は公表されていません。)は、長い間、ボストン大学法学部の教授です。専門は、信託(Trust)の分野および資産証券化(資産流動化とも称されます。)(Securitization)の分野です。いわば、健全な投資の本格的な研究者です。補注 ただし、信頼すべき資料によりますと、1925年のアメリカ独立記念日である7月4日生まれとなっていますから、2013年1月1日現在、満87歳6ヶ月ということになります。
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注2
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Tamar Frankel, The Ponzi Scheme Puzzle: A History and
Analysis of Con Artists and Victims, Oxford University
Press, 2012.
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注3
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もちろん、ある特定の投資家をとってみれば、第1グループから最終グループまでの各グループの2つ以上のグループに属している投資家もいますから、トータルで、利益となったり、損失となったりする投資家もいる訳です。
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注4
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フランケル女史は、この近著の冒頭に、つぎのようなForbesからの論文記事を引用しています。−:アメリカの大衆は、昔とは比較にならない位、高い教育を受け、多くの情報を得ている。しかし、ここにパラドックスが存在する。すなわち、人々は、知識を持てば持つほど、自分たちが行う投資についてますます愚かになり、ますます軽率になっているようである、というパラドックスである。Richard
L. Stern and Lisa Gubernick, The Smarter They Are, the
Harder They Fall, Forbes, May 20, 1985, at 38−
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