前回(第77回)で引用しましたフランケル女史の最近の著書「ポンジー・スキームの謎(詐欺師たちと被害者たちの歴史と分析)」によりますと、ポンジー・スキームという投資詐欺には、少なくとも、つぎのような5つの赤旗(Red
Flag)= 危険信号がある、ということです。
赤旗その1:ハイリターン・ローリスクを宣伝する注1。
「もし、ハイリターンとローリスクが同時に宣伝されたとすれば、ハイリターンという部分か、ローリスクという部分か、どちらかが嘘である可能性が高い。注2」つまり、ハイリターン(高い利益)であればハイリスク(高いリスク)であるし、ローリスク(低いリスク)であればローリターン(低い利益)であるのが通常だからです。
赤旗その2:投資家に対する支払の源泉となる利益を生み出すというスキームが従来の手法では評価できないほど斬新性を有する注3。つまり、「高い利益の源泉となる仕組みが一種の秘法注4」とされるという訳です。
赤旗その3:つねに新しい投資家たちを追加募集している。
銀行などの金融機関であれば、つねに新しい預金者を追加募集するのは当然ですが、そのような必要性のない筈の企業が、つねに新しい投資家を追加募集することは不自然であるという訳です注5。
赤旗その4:販売員たちは投資家たちと親密な個人的関係を築くことに専念する注6。つまり、「販売員と顧客」という関係よりも、「親密な個人的関係」を築くことに主眼を置くことは不自然であるという訳です。
赤旗その5:その投資が有価証券の形態をとる場合、有価証券に関する法律の違反がある注7。たとえば、公募であれば「証券取引委員会(SEC)への登録」が必要であり、私募であれば「情報の提供」が必要です。ただし、この情報は「証券取引委員会の調査」を経たものではありません。つまり、公募なのに「証券取引委員会(SEC)への登録」を怠ったり、私募であっても「情報の提供」を怠たれば、法律違反であって、投資家たちは保護されないという訳です注8。
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前回(第77回)でも述べましたように、フランケル女史のこの近著の帯紙の内容紹介によりますと、高名な学者であるフランケル女史は、「投資詐欺はどうして無くならないのか」を歴史的に研究した結果、「投資詐欺を防止するための驚くべき解決策」を提案している、ということでしたが、上記の5つの赤旗(Red
Flag)=
危険信号はとくに目新しいものではなく、要は、これらの赤旗に注意しろ、ということで、私には「常識的な解決策」以上のものとは思えません注9。しかし、これは私の読み方が浅いのかも知れませんので、もう一度読み返して見ることにしましょう。
脚注
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注1 |
Tamar Frankel,
The Ponzi Scheme Puzzle: A History and Analysis of Con
Artists and Victims, Oxford University Press, 2012.の170頁
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注2 |
同書の171頁。
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注3 |
同書の170頁。
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注4 |
同書の172頁。
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注5 |
同書の170頁。
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注6 |
同書の170頁。
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注7 |
同書の170頁。
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注8 |
同書の173頁。
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注9 |
むしろ、九条清隆、巨額年金消失。AIJ事件の深き闇、角川書店、平成24年8月31日発行、の方が私には参考になりました。
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