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大塚正民の考古学と考古学の広場

95回 信託その16:信託と税務(日米比較その11:生命保険信託)

2014/7/1

大塚 正民

大塚正民 法律会計事務所
 

アメリカでは「撤回不能生命保険信託(Irrevocable Life Insurance Trust: ILITと略称されています。)」という保険商品があること、および、このような保険商品が売れるのはアメリカの税務上の取扱い(すべて無税)にあることを、第89回 信託その10:信託と税務(日米比較その5)で述べました。もし同じような保険商品が日本にあるとすれば、そのような保険商品の日本の税務上の取扱いは、どうなるでしょうか。同じく極端に簡略化した例を考えて見ることにしましょう
設定者は父親F、受託者はX信託会社、受益者は息子Sです。設定者Fは受託者X信託会社に100万円を預けます。受託者X信託会社は、Fを被保険者、保険金受取人をX信託会社、生命保険金を1億円とする生命保険契約をY保険会社と締結し、最初の保険料をとして、上記の設定者Fから預かった100万円をY保険会社に支払います。爾後、設定者Fは、毎年100万円を受託者X信託会社に預け、X信託会社は爾後の保険料として毎年100万円をY保険会社に支払います。設定者兼被保険者Fの死亡によりY保険会社からX信託会社に支払われる1億円は受益者Sに分配されるとします。
最初の保険料100万円および爾後の毎年100万円は、設定者Fから受益者Sに対する贈与と見なされるでしょうが、いずれも贈与税の基礎控除額110万円以下ですから、贈与税の課税は無いでしょう。1億円の保険金の保険金受取人であるX信託会社には課税が無く、分配を受けた受益者Sには相続税の課税があるでしょう。
ところで、上記の設例を少し変えて見ましょう。上記の設例では、毎年の保険料を設定者Fが毎年X信託会社に預け、X信託会社が毎年の保険料をY保険会社に支払っていますが、もし、設定者Fが当初から受託者X信託会社に3,000万円を預け、この3,000万円を合同運用金銭信託で運用し、その元利合計から、毎年の保険料をX信託会社がY保険会社に支払うという特約がある場合にはどうでしょうか?
鯖田さんの著書によりますと注1、「生命保険信託は、その名のとおり、生命保険を信託財産として受け入れるもので、わが国では、1924年(大正13年)に、当時の三井信託が取り扱ったのが最初とされている。・・・生命保険信託は、このように、生命保険契約に基づく保険金受取の権利(生命保険債権)を信託財産として受け入れ、満期または保険事故発生の場合に、受託者がその保険金を受領の上、信託契約の定めに従い、受益者のために管理・運用または交付するものをいう。したがって、保険金を受け取るまでは金銭の信託(ものの信託)であり、受け取った保険金の運用を行う場合は、金銭信託(金銭の信託)となる。・・・生命保険料の払い込みの取扱いで、無財源生命保険信託と財源付生命保険信託に区分される。無財源生命保険信託は、生命保険料の払い込みを委託者が行うもので、財源付生命保険信託は、受託者が委託者に代わって生命保険料を払い込むものである。」とのことです。
それでは、無財源生命保険信託と財源付生命保険信託とでは、税務上の取扱いに違いがあるのでしょうか?この点を次回(第96回)信託その17:信託と税務(日米比較その12:生命保険信託その2)で検討しましょう注2

脚注
 
注1

鯖田豊則、要点解説100信託実務がわかる、税務経理協会、平成⒛年(2008年)⒋月28日発行、234頁以下

注2

この点を論じた文献として、UAPレポート、生命保険信託とみなし贈与、税理士法人UAP、平成23年(2011年)8月5日発行、があります。

   
   


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更新日:2014/07/01