2006年5月16日の第7回掲載分では、アメリカの内部告発義務法としてのPrivate Securities
Litigation Reform Act of 1995よって創設されたSecurities Exchange Act
of 1934 のSection 10Aを
見ました。そして、「このように公認会計士に内部告発義務を課す法律は、現在のところ、日本では存在しません」と書きました。ところがその直後になって事態は急変しました。2007年6月27日に公布された「公認会計士法等の一部を改正する法律」によって、金融商品取引法(以下「金商法」と呼びます。)第193条の3が新設され、2008年4月1日から施行されたからです。この新設された金商法第193条の3は、基本的には、第7回掲載分で見たSecurities
Exchange Act of 1934 のSection 10Aと同趣旨です。
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監査人である公認会計士が被監査会社の「法令違反等事実」を発見したときは、遅滞なく、A.その法令違反等事実の内容、Bそれを是正する適切な措置をとるべき旨、Cもし適切な措置が一定期間内に取られなかった場合にはその事態を内閣総理大臣に申出する旨を、被監査会社に対し書面で通知する。
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もし適切な措置が一定期間内に被監査会社によってとられなかった場合には、監査人である公認会計士は、上記の事態を内閣総理大臣に申出する。
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もし監査人が上記の事態を内閣総理大臣に申出した場合には、Aそのような申出をした旨、Bそのような申出の内容を、被監査会社に対し書面で通知する。
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監査人が、A
1の被監査会社に対する書面による通知を怠った場合、B
2の内閣総理大臣対する申出を怠った場合、または、虚偽の申出を行った場合、C
3の被監査会社に対する書面による通知を怠った場合、または、虚偽の通知を行った場合には、それぞれについて30万円以下の過料が課せられる。
かくして2008年4月1日以降、日本の公認会計士にも内部告発義務が課されるに至ったのです。
ところで2006年6月1日の第8回掲載分では、「日本の内部告発義務法としてのいわゆるゲートキーパー制度の立法化が日本でも検討されるようになりました」と書きました。ところがここでも事態は急変しました。2007年3月31日に公布された「犯罪による収益の移転防止に関する法律」(いわゆるマネー・ローンダリング(資金洗浄)対策法)によって、2008年3月1日以降、一定の者に「疑わしい取引の届出」の義務が課されるに至っています。この点については、次回に見ることにしましょう。
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