すでに(第37回)述べましたように、どのような「日本法」の分野の専門家になるにしても、「すべての事柄(自分の自称専門分野以外の分野も含めて)について何ほどか」を「知るよう努力すべき」であり、「ある事柄(自分の自称専門分野)についてすべて」を「知るよう努力すべき」なのです。この意味での「すべての事柄」としての「日本法」を以下の14種類(分野)に分類しました。
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日本法の種類(分野)
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英語訳
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英語の略称
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1.
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独占禁止法
(公正取引委員会)
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Antitrust Law
(Fair Trade Commission)
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FTC
エフ・テー・シー
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2.
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外国為替法
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Foreign Exchange
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F エフ
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3.
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税法
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Tax
Law
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T テー
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4.
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会社法
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Corporation Law
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C シー
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5.
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労働法
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Labor Law
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L エル
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6.
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証券法
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Securities Law
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S エス
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7.
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保険法
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Insurance Law
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I アイ
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8.
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訴訟法(仲裁法)
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Litigation (Arbitration)
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L エル
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9.
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国防法
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National Security
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S エス
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10.
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移民法(貿易法)
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Immigration Law (Import/Export Law)
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I アイ
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11.
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知的財産法
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Intellectual Property Law
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P パ
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12.
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環境法
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Environmental Law
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E アー
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13.
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業法(規制法)
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Regulated Business Law
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R アー
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14.
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消費者法
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Consumer Protection Law
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C ク
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これら14の分野の中、これまでに上記の1番目から9番目までの分野について「何ほどかを知るよう努力 (try to
know something about
everything)」して来ました。今回からは上記の10番目の分野に移ります。
皆さんは、アメリカ合衆国の移民法上のグリーン・カードという言葉をお聞きになったことがあると思います。グリーン・カードとは、時には、パーマネント・ビザと呼ばれることがありますが、正確には、ビザ(査証)ではなく、I-551フォーム(永住権を有する外国人身分証明書)を意味します。このようなアメリカの移民法制度を理解するためには、まず日本の移民法制度を知ることが重要です。
日本に入国(法律上は「上陸」と表示されています。)しようとする外国人は、原則として、有効な旅券(パスポート)で日本国の外務省(法律上は「領事官等」と表示されています。)が発行する査証(ビザ)を受けたものを所持しなければならず、入国のための条件に適合しているかの審査を受けなければなりません(注1)。「旅券(パスポート)」とは、自国民が外国に旅行するときに、その本国政府がその自国民本人の身分・国籍を公的に証明するために発行する文書です。「査証(ビザ)」とは、その外国人が入国しようとする国(この場合は日本国)の政府が入国を許可するために発行する文書です。原則として、旅券に査証スタンプを押すという形式で発行されます。日本の場合、「査証」を発行するのは外務省の機関としての領事官であり、「入国審査」を行うのは法務省の機関としての地方入国管理局(たとえば東京入国管理局)の入国審査官です。日本に在留する外国人が永住許可を受けますと、在留期間および在留資格に関する制約が一切無くなり、旅券を所持している場合には、旅券に記載された在留期間および在留資格は抹消され、代りに永住許可の証印がおされ、旅券を所持していない場合には、永住許可を証明する在留資格証明書が交付されます(注2)。
このような日本の移民法制度とアメリカの移民法制度(注3)とを対比して見ましょう。
アメリカに入国しようとする外国人(たとえば日本人)は、原則として、有効なパスポート(たとえば日本国が発行した旅券)でアメリカの領事官が発行するビザを受けたものを所持しなければならず、入国のための条件に適合しているかの審査を受けなければなりません。アメリカの場合、「ビザ」を発行するのは国務省(State
Department)の機関としての領事官(consul)であり、「入国審査」を行うのは国土安全保障省(Department
of Homeland Security)の機関としての移民関税執行局(Immigration and Customs
Enforcement – ICE)の移民関税執行官(immigration and customs
enforcement
officer)です。アメリカに在留する外国人(たとえば日本人)が永住許可を受けますと、在留期間および在留資格に関する制約が一切無くなり、永住許可を証明する外国人身分証明書(United
States Permanent Resident Card)としてのI-551フォーム(USCIS Form
I-551)が交付されます。このI-551フォームのデザインおよび色は、何度か変更されていますが、当初の色がグリーン(緑)色だったので、昔からグリーン・カードと呼ばれています。
脚注
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注1
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出入国管理及び難民認定法6条1項本文:本邦に上陸しようとする外国人・・・は、有効な旅券で日本国領事官等の査証を受けたものを所持しなければならない。;同法6条2項:前項本文の外国人は、その者が上陸しようとする出入国港において、法務省令の定める手続により、入国審査官に対し上陸の申請をして、上陸のための審査を受けなければならない。;同法7条1項:入国審査官は、前条2項の申請があったときは、当該外国人が次の各号・・・に掲げる上陸のための条件に適合しているかどうかを審査しなければならない。
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注2
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出入国管理及び難民認定法22条3項前文:法務大臣は、[永住]
許可をする場合には、入国審査官に、当該許可に係る外国人が旅券を所持しているときは旅券に記載された在留資格および在留期間を抹消させた上当該旅券に永住許可の証印をさせ、旅券を所持していないときは永住を許可された旨を記載した在留資格証明書を交付させるものとする。
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注3
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アメリカの移民法制度は、2001年9月11日に起きた同時多発テロ事件が原因で、2002年11月25日に国土安全保障省が設立されるなど、大きな変更が行われました。ウイキペディア「アメリカ合衆国国土安全保障省」(最終検索:2011年11月30日)
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