知財問屋 片岡秀太郎商店  会員登録(無料)
  chizai-tank.com お問い合わせ
HOME 右脳インタビュー 法考古学と税考古学の広場 孫崎享のPower Briefing 原田靖博の内外金融雑感 特設コーナー about us  
 

大塚正民の考古学と考古学の広場

第84回:信託その5:信託と税務上の恩典(特別な信託)

2013/8/1

大塚 正民
大塚正民 法律会計事務所
 


すでに述べましたように、日本の贈与税の観点からすれば、「信託」は「直接の贈与」と効果が同じです。つまり、父親甲野太郎が娘甲野花子に対して太郎が所有している土地・建物を直接に贈与した場合と、太郎がX信託株式会社との間で「信託契約」を結び、この「信託契約」によれば、「委託者」太郎は「受託者」X信託株式会社に対して太郎が所有している土地・建物の所有者名義を移転し、X信託株式会社は、この土地・建物を第三者に賃貸し、賃貸料収入から必要経費(X信託株式会社の報酬を含む。)を差し引いた利益の全額を「受益者」花子に分配することにした場合と、日本の贈与税の観点からすれば、違いがありません。いずれの場合も、この土地・建物の価格を基準として、花子には日本の贈与税が課せられます。このことは、「土地・建物の信託」でも「現金の信託」でも同じです。たとえば、太郎が花子に現金を直接に贈与した場合と、太郎がX信託株式会社との間で「信託契約」を結び、この「信託契約」によれば、「委託者」太郎は「受託者」X信託株式会社に対して現金を移転し、その現金を「受益者」花子のために管理・運用し、最終的には花子に支払うことにした場合と、日本の贈与税の観点からすれば、違いがありません。いずれの場合も、この現金の金額を基準として、花子には日本の贈与税が課せられます。ただし、この現金の信託の場合注1、花子が障害者であって、太郎がX信託株式会社に対して現金を信託したのは、この障害者である花子の生活の安定を図ることを目的としていたのであれば、「特定贈与信託注2」として一定金額を限度に贈与税が非課税となります注3。このような税務上の特典のある「現金の信託」の1つとして平成25年税制改正で創設された「教育資金贈与信託」があります。これは「直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税措置注4」として、平成25年4月1日から平成27年12月31日までの時限的措置です。たとえば、祖父母(贈与者)が子・孫(受贈者)に対して教育資金を贈与した場合、子・孫ごとに1,500萬円を限度に贈与税を非課税とするものです。

 

脚注
 
注1

信託する財産は、普通は「現金」ですが、「有価証券」その他でも良い場合があります。相続税法第24条の4第2項;相続税法施行令第4条の11。

注2

法律上の名称は「特定障害者扶養信託」ですが、一般に「特定贈与信託」と呼ばれています。

注3

相続税法第24条の4第1項によりますと、その障害の種類・程度によって、非課税限度額は6,000萬円か3,000萬円になります。

注4

租税特別措置法第70条の2の2、租税特別措置法施行令第40条の4の3、租税特別措置法施行規則第23条の5の3、平成25年文部科学省告示第68号、平成25年文部科学省・厚生労働省告示第1号。

   
   
   
   
   
   


大塚正民弁護士へのご質問は、こちらからお願い致します。  <質問する

  質問コーナー(FAQ)
  

ご質問は、編集部の判断によって、プライバシー等十分配慮した上で、一部修正・加筆後、サイトへ掲載させて戴く場合がございますので、予めご了承ください。

本メールの交換はすべて編集部を介して行われます。

すべてのメールには、お返事できない場合もございます。ご了承下さい。

 

 

 

chizai-tank.com

  © 2006 知財問屋 片岡秀太郎商店

更新日:2013/07/29