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プロフィール
1975年生まれ。熊本市出身。
東京理科大学 理工学部情報科学科卒。NTT勤務を経て書道家となる。
http://www.souun.net/
母は書道家 武田 双葉(注1)、弟は武田
双龍(注2)。
B'z、野村萬斎など様々なアーティストとのコラボレーションの他、モスクワ、ブリュッセルなど世界各国のイベントにて、数多くのパフォーマンス書道を手掛ける。伊勢神宮奉納祭 アマテラスオオミカミに書を奉納。
映画『春の雪』、『北の零年』、テレビ朝日ドラマ『けものみち』、TBS大河ドラマ『里見八犬伝』、『愛・地球博』の愛知万博テーマ館『自然の叡智』の六つのブース等の題字を手掛ける。その他、NHKの『NHK課外授業
ようこそ先輩』、『ニッポン先端人』、日本テレビの『世界一受けたい授業』等の数多くのTV番組に出演。
主な著書
『 たのしか 』 武田双雲著 ダイヤモンド社 2006年
『 書愉道―双雲流自由書入門 』武田双雲著 池田書店 2005年
『 「書」を書く愉しみ 』武田双雲著 光文社新書 2004年 |
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片岡:
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第20回の右脳インタビューは書道家(注3)の武田双雲さんです。武田さんは、B’z(注4)や野村萬斎(注5)とのコラボレーションやTVにも精力的に取り組み、従来の書道家のイメージを刷新するご活躍です。まずは創作についてお伺いしながらインタビューを始めたいと思います。
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武田:
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私の場合、伝えたいイメージが最初に浮かび、それを磨いているうちにポエムとなり、そしてその言葉にできない部分を書で補います。兆しが見えていてそれを形に表現していく彫刻のようなものかもしれません。ですから伝えたいものがあって、その手段が書で、創作もパフォーマンス書道もそういった表現方法の一つに過ぎません。あくまでも伝えることが目的です。評価されたいというのが私の野心かもしれません。
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片岡:
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お金については如何でしょうか
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武田:
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よくお金のことを考えないで・・・ということがありますが、お金というものは、世界で唯一、自由に交換できて共通に利用できる指標で、人や社会と切っても切れない関係にあります。ですからお金のことを考えることは、寧ろ、人間や社会を大切に見ることではないでしょうか。私の場合は、創作の作品はすべて手元に置いていて、売ろうという考えは今のところありません。ただ、作品がもととなる書籍の印税や複製(最新の印刷技術を用いた)の販売による収入があります。複製品の価格は、いくらにすれば、皆さんに広まるか…といったことをしっかり相談しながら設定しました。
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片岡:
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例えば絵画で、活動中の作家の作品に高い価格がつくことは、残念ながら少なく、かつてピカソもオークションで自ら高値で落札し、値段を吊り上げ、また話題を作る努力をしたとか。書の場合は如何でしょうか。
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武田:
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書は特に、昔の作品の方が評価される傾向があります。更に誰が書いたかということが重要視されます。例えば『名言』は、考えてみるとすごく当たり前のことだったりします。それをあのOOOが言ったとなると俄然重みが変ってきます。書も同じような側面があり、その書が、どういった時代に、どれだけの人に影響を与えたかが重要となります。つまり書いた人の人間力が問われているということで、逆にいえば、良い書を書くには、結局、人間力が必要です。
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片岡:
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書聖と言われる王羲之(注6)も、名家の出身で高名な政治家でした。
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武田:
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生まれながらの芸術家という人はいません。誰でも何らかの形でビジネスをしたり、いろいろな経験を積んでいます。途中経過が異なれば、百者百様の表現が生まれるのは当然です。だから本気で伝えたい、表現したいと思えば、自然と、その人の独特の表現が生まれるものと思います。
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片岡:
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パフォーマンス書道もそうした武田さんの表現の一つですね。やはり創作とはことなる表現の特徴があるのでしょうか。
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武田:
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創作は一点集中ですが、パフォーマンスでは時間や空間、お客さんなど全体を意識します。またパフォーマンスの書は、いきなりドーンという感じで、終わってみると勢いがグッと詰まっています。
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片岡:
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出来あがった作品はどうなさるのでしょうか。
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武田:
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パフォーマンスの際の作品は、依頼主やスポンサーの方々のご希望に沿って差し上げています。作品をここ(事務所)に置くには、あまりに巨大ですしね。ビジネス的に言うと一回の出演料がいくらで、その中に作品も含まれるということになります。題字やロゴの仕事も同じです。
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片岡: |
どれだけの人に伝わったか…という点では、『世界一受けたい授業』、『ようこそ先輩』等のTVはさらに影響力を持っていますね。
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武田:
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『伝える』ということは書でもTVでも大変難しく、TVの舞台裏では多くのスタッフが視聴者のことを必死に考えています。私も、そうした中で自分が今できることを、ひたすらやります。ただ私自身はTVでも、他の仕事と同じ気持ちで臨んでいるつもりなのですが、やはり周りには『数字(視聴率)が取れる男だ・・・』とそれなりの期待があります。ここ2年くらいは数字に惑わされることもありました。最近では、やっとそうした感情から抜け出して数字を楽しむことができるようになり、下がれば、なぜだろう・・上がればただニンマリとしています。また、よくWIN,
WINということがありますが、私は当事者だけでなくお客さんも含めて関係者全員がWIN, WIN,
WINになるように、その面では妥協せず、ぎりぎりまで追求しています。これは私のこだわりです。
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片岡:
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書道教室については如何でしょうか。
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武田:
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書道教室はいろいろな意味で私のベースです。ビジネスとしてみた場合も、200人〜300人の生徒さんがおり、安定的な収入源となっています。そしてなにより書の素晴らしさや楽しさを直にお伝えできますし、また同じ人たちと長い期間、お付き合いすることができることは、私自身の人間力を培う意味でも大切な機会です。
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片岡:
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多岐にわたる活動ですが、はじめからこうしたことを考えていたのでしょうか。
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武田:
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今のような形になるのに、ストラテジーとか、そういったものがあったわけでもなく、いわゆる営業活動をこちらからしてきたわけでもありません。知り合った方、或いは全く知らない方々が私のことをこう起用してみたい等と企画・宣伝して下さり、それなりに選別はしますが、依頼された仕事を出来るだけ引き受けて、一つ一つお応えしてきただけです。そして一端お引き受けした事は、どんな仕事もすべて同じに全力で臨みます。こうした活動を通じて、一人一人、ジワッと広がって、世界中で一億人の人に感動して貰えるようになりたいと思っています。
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片岡:
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どんな依頼にも応えていくということは、ある意味チャレンジングで、またそうしたことができるベースを整えてこられたものと思います。ただ今の様になるまでにはご苦労も多かったのではないでしょうか。
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武田:
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独立すれば、最初の数年はやはり大変なものです。ここまで来られたのは、根拠のない『勘違いの自信』があったからです。例えば、『私には志がある。だからできるはずだ。依頼される仕事だって、いい仕事なはずだ。意味があるはずだ・・・』と。ですからNTTを辞め書道家へ進んだのも自然なことでした。またそれに相応しい人間力をつけるためにも、既に1億人に影響を与えている自分になりきって、ものを見て、考え行動しています。
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片岡:
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といいますと。
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武田:
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こうなりたいという理想があるとします。しかし『理想』と思った時点で、それは今の自分がそうでないということを無意識のうちに感じているわけですから限界があります。それはでもったいないことです。すでに大きな器になっている自分の視点から俯瞰して、毎日行動すれば、もっと良いのではないでしょうか。
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片岡:
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大きな違いですね。本日は貴重なお話を有難うございました。
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(敬称略) |
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−完− |
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インタビュー後記
パソコンや携帯など活字が氾濫する中で、『手書きの文字』の役割が変化しています。武田さんは、そうした中で、名刺作りのネットビジネス(ふで文字や.com)、ストリート書道家、異分野とのコラボレーション、パフォーマンス書道、TV・・・と、アウトサイドから一気に時代の波を手繰り寄せ、気鋭の書道家として檜舞台へと躍り出ました。そして、このサクセスストーリーを目指して、多くの若者が新しい書道家の道を模索し、書道界の胎動が始まろうとしています。まさに書道界のアントレプレナーです。こうした潮流が一時のブームに終わることなく、新しい書の文化を産み落す日も近いのかもしれません。
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聞き手
片岡 秀太郎
1970年 長崎県生まれ。東京大学工学部卒、大学院修士課程修了。博士課程に在学中、アメリカズカップ・ニッポンチャレンジチームのプロジェクトへの参加を経て、海を愛する夢多き起業家や企業買収家と出会い、その大航海魂に魅せられ起業家を志し、知財問屋 片岡秀太郎商店を設立。 |
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脚注
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注1 |
武田双葉については下記をご参照下さい。
http://ameblo.jp/souyou/
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注2 |
武田双龍について下記をご参照下さい。
http://so-ryu.com/top.html
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注3 |
書道については下記をご参照下さい。
http://ja.wikipedia.org/wiki/書道
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注4 |
B'z。松本孝弘、稲葉浩志の2人で構成される日本を代表するロックユニット。ビーイング傘下のレーベル、VERMILLION
RECORDSに所属。
CD総出荷枚数:約9,500万枚(歴代1位)
認定ミリオンセラー数(出荷枚数):シングル20作・アルバム21作(ともに歴代1位)
LIVE観客総動員数:延べ約700万人(歴代2位)
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注5 |
野村萬斎 狂言師。詳細は下記をご参照下さい。
http://ja.wikipedia.org/wiki/野村萬斎
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注6 |
王羲之については下記をご参照下さい。
http://ja.wikipedia.org/wiki/王羲之
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(敬称略)
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片岡秀太郎の右脳インタビューへ |