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1944年、宮城県塩竈市生まれ。東北大学法学部卒。71年、防衛庁入庁。装備局航空機課長(FSX担当)、長官官房広報課長(カンボジアPKOの広報担当)、防衛局防衛政策課長(阪神・淡路大震災対応)などを経て、96年、内閣審議官として普天間問題に係わる。長官官房長、防衛局長を務めた後、2003年、防衛事務次官。07年8月に防衛省を退職。
主な著書
『日本防衛秘録』 新潮社 2013年
『「普天間」交渉秘録』 新潮文庫 2012年
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片岡: |
今月の右脳インタビューは守屋武昌さんです。それでは、守屋さんが言われている米国の国益とっての日本の安全保障上の役割等お伺いしながらインタビューをはじめたいと思います。宜しくお願い致します。
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.守屋: |
よく「日本は米国に守ってもらっている」いう主張をする人が識者といわれている人々の中にいます。1961年に締結された日米安全保障条約が今も維持されていることを踏まえて言っているのではないかと思います。2度の世界大戦を経ても国際紛争を解決するのに武力を使用するのが世界の冷厳な現実です。このような現実に自国が巻き込まれないように備える。万一武力攻撃を受けた時にはこれを排除する。それが安全保障の問題です。しかし、戦後長い間、国土が戦場になったり、多くの国民が戦争に巻き込まれることがなかった日本では、第二次世界大戦における悲惨な戦争体験が語り続けられる一方で、現実に戦争生起の可能性が発生した場合に国民や国土を守れるかという国家の役割、国民の義務についての議論は影を潜め、国会質疑でも国民教育の場でも取り上げられることのない長い時が過ぎました。そのこともあって、国家国民の平和と安全をどうしたら確保できるのか、そのために世界の国々がどのような施策を講じているかについての知識が失われてしまっています。
一国の安全保障の問題はその国の人的・物的資源などの国力・国情を踏まえた上で、その国を取り巻く国際社会の動向、とりわけ国際軍事情勢の正確な分析評価が必要になります。「米国に守ってもらえる」という判断は、この分析評価に立脚するものでなければなりません。
現代社会ではどんな強国でも一国だけで自国の安全保障を全うすることが出来ません。米国が日本との安全保障条約を1951年から維持しているのは、アジアにおいて米国の国益を確保する上で必要不可欠と考えているからです。
お荷物の国と付き合う国はどこにもありません。米国だって自国で新たに大量 の石油資源が発見され、それが安定的に算出されるとなると、あれだけ関与していた中東問題から手を引き始めています。その基礎になっているのは米国の国力・国情と国際軍事情勢の変化です。
先富論を唱え、1978年、ケ小平が改革開放経済を打ち出してきてから、世界は中国の広大な国土に住む人口13億人の市場の大きさに着目して先を競うように参入していきました。問題は共産党の一党独裁で、実質的に国民に選挙権も被選挙権もなく、改革開放経済を支える経済活動の起業には共産党のお墨付き必要で、誰もが自由に起業が出来ないことでした。1989年「政治の民主化」を求めて北京市天安門広場に集まった群衆に対して、中国戒厳部隊は発砲して多数の死傷者が発生するという事件が発生しました。又、死者が発生する暴動事件も頻発するようになり2000年代は年間1万件だった件数が最近は30万件に達するという報道があります。
この時期と期を一にして行われてきたのが、中国の東シナ海・南シナ海で活動できる第一列島線海軍整備計画(2000〜2010)と東京からサイパン・グアムを経てインドネシアに至る海域で活動できる第2列島線海軍整備計画(2010〜2020)です。
また最近の中国政府による尖閣列島、南沙諸島、西沙諸島における領有権主張や中国艦船による東シナ海、南シナ海による資源探索などの諸活動は「力による国際秩序の変更」で、国際社会の受容できるものではありません。
これらの出来事は、これまでともすれば中国市場の大きさに目を向けていたアメリカに東アジアにおける安定的な安全保障環境の構築の必要性を認識させる契機になったと私は考えています。その中核となる要素はどんなに飛行機が早くなってもこのアジア地域は米国から遠すぎるといったファクトを踏まえて、日本のもつ戦略的地勢です。例えば地図を見ると、今、米国にとって最大の関心事の一つである中国を、日本列島と南西諸島、台湾、更に南沙諸島と西沙諸島がぐるっと抑え込んでいるのが分かります。つまり中国は他の国の領域を通らないと太平洋に出られず、航空機の飛び方、艦船の航路が限定されるし、そこで日米両国が常続的に監視活動を、行えば必要な情報を収集することができます。これは核戦略上重要な潜水艦に対しても同じです。それともう一つ、中国の海洋面積は、大きくないことに加えて 現在の産業規模というか国力を維持していこうとすれば、資源の確保の戦略も必要になる。
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片岡: |
だから、世界経済の中国への期待度が高いうちに資源とルートを抑える…。
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.守屋: |
それを中国は力でやろうとしています。これまで米国も欧州も中国の経済力を優先してきて、EUは依然としてそこが治らない。今、中国が海洋進出してバリアを作ると、米国はこの地域に近づけなくなるので、そうならないようにするために、日、豪と組んで東南アジアの国々をサポートしようとしています。更に中国自身も、改革開放経済で、国内に世界各国の情報が入ってくるようになり、「なぜ、特定の人間ばかりよくて、自分たちは豊かになれないのだろう…」と不満が高まってきています。普通だったら、それを是正していくのでしょうが、中国は民衆の怒りを外に向けさせている。そうした手法だとこの地域が不安定になる。米国はやっとそこに気が付きました。
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片岡: |
或は、やっとそこに手を付けられるようになった、手を付けなくてはいけなくなった…。もともと中国は1980年代半ばには「近海積極防御戦略」の中で、2010〜20年は躍進好機と位置付け、空母を保有し、第二列島線内側海域での中国海軍による制海権確保を明言していますし、1992年には尖閣諸島、西沙諸島、南沙諸島を中国領海と定める領海法も制定しています。中国の経済的発展を重ねれば、中国の方向性は想定の範囲内だったのではないのでしょうか。
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.守屋: |
例えば、日本がウクライナの問題に関心が薄いように、やはり遠いところは…。今でも、その地域の安全保障は周辺の国がやらないと世界は動きません。それに、嘗てソ連は冷戦下で空母の保有に挑戦し、巨額の財政負担に国が疲弊した例があります。空母の建造費は一隻当たり1兆円、維持費は1日1億円といわれ、国の命運を左右します。米国も、中国は、結局は、もう少し民衆に目を向けると分析していた。しかし、中国はそうしなかった。その上、金持ちはどんどん国外に逃げ出す準備をしています。
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片岡: |
先年、ヒラリー・クリントン国務長官が、ハーバード大学で「中国9割の官僚家族と8割の富豪がすでに移民申請を出した、或はその意向がある。一国家の指導層と既得権益階級がなぜ自国に自信をなくすのか理解しがたい…」といった発言をしたとするネットの記事が謎の発言として話題になりました。
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.守屋: |
米国内でも「クリントンがいったかどうか疑わしい」と大新聞などは言っています。しかし、本当にそうした発言をしていないのであれば、国務長官の発言ですから、きちんと否定するはずです。それを否定しないで残しておくということは、それは、アメリカ政府はコミットしない形で、世界、中国等に伝えているということでしょう。米国の典型的な手法ともいえるのですが、そういうものを日本の主要メディアは伝えようとしません。
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片岡: |
米国は、不正競争防止法の適応範囲を米国外にも広げたり、マネーロンダリングの締め付けを世界中で強化させたりしています。そういう流れの中での発言となると、意味は大きいですね。
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.守屋: |
そうした点をみれば、米国が、憲法改正を公約としていた安倍首相に、「日米防衛協力の指針(ガイドライン)」の3回目となる改正を求めたのは、「中国の危険性が顕在化してくるのに時間がない」とみているということだと考えるべきです。軍事力というのは、その地域に持っていったらすぐ使えるというものではありません。米国のように常に全世界の如何なる地域、自然環境の中でも軍事行動が出来るように軍隊の態勢を整えている国は非常に限られています。多くの国では自国の領域を、遠く離れた地域に展開して、その土地の自然環境を克服して、実際に軍事力を行使できる体制を作るには時間がかかります。自衛艦をイラクに派遣した時、砂嵐が海上まで来て、粒子の細かい砂を装備していたフイルターでは防げず、出力低下に陥らない工夫が必要とされましたし、海水をくみ上げて冷却する装置も温度が日本に比べて高いことから、下げるのに対策を講じる必要がありました。旧日本軍は戦地の研究をおろそかにしたから、ロジスティックで大変な苦労をしましたが、米国はロジスティックを重視して対応していました。そうしたことを考えていくと、米国は中国が危なくなるのを4,5年先とみているといえるのではないでしょうか。中国はとにかく、内政問題をかたづけないと、自分で国がおかしくなってしまいます。あれだけの人口を抱え、その中で党員や軍人だけが良い生活をし過ぎです。中南海に高級官僚が、高い塀に囲まれた高級住宅地をつくり、更に拡大して…。
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片岡: |
そうした特権的な人たち専用の畑があり、安全な野菜を作っているといわれています。国民の怒りは増幅する一方、特権階級やその周辺に恩恵を手放させることはどんどん難しくなっていく…。
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.守屋: |
だから中国は、その国民の怒りを外に逸らそうとする。南シナ海、東シナ海、或は尖閣…。米国は、そういう手法では成功しないということを中国に判らせようと考えています。しかし、イギリスやフランスにとって中国の市場は大切であり、一方で東アジアまで来て日米と行動を共にすべき国際情勢ではないと考えていると思われます。海軍力の整備には巨額の国家予算を必要とするので、フィリピンやマレーシア、インドネシア、シンガポールといった国々の海軍力の規模は小さく、中国の海軍力に対応できません。米国が、この地域で、中国を思いとどまらせるようなパワーを形づくることを考えた場合、それは日本しかありません。更に米国は、オーストラリアも引き入れようとしています。東アジアで一番大きい海軍力は米第7艦隊で、次が日本、3番目がオーストラリアです。この3者が揃えば、中国がいくらお金を使って海軍力を整備しても適いません。
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片岡: |
ロシアについては如何でしょうか。中露の関係は、パワーバランスに大きな影響を与えるのではないでしょうか。
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守屋: |
ロシアはもともと中国が強大な存在になるのを嫌がっています。というのは、中国が将来、極東シベリアを獲りに来ると見ていて、そうなった時、ロシアには、中国の人の波を防ぐことができないからです。北から戦うことになるロシアのロジスティックは極寒の地にあり、特に食料が問題となるのに対して、南からくる中国にはその心配がありません。実際、冷戦前、対米前線基地であった極東ロシア管区は、冷戦後、人口が減少して600万人程になっています。例えば北海道はその1/8くらいの面積ですが人口は500万人を超えています。ロシアにとって、中国と事を構えるのは大変な負担であり、勿論、中国がロシアに来たときは必ず防ぐつもりだけど、そういう段階にいたらない間は中国と緊張関係を作らない方がいいと考えています。
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片岡: |
それは、中露は最終的には、手を組むことはないということでしょうか?
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.守屋: |
そういうことです。
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片岡: |
それでは次に、日本の防衛省の問題点等、お伺いしたいと思います。まずはシビリアン・コントロールについてお聞かせ下さい。
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.守屋: |
内局には、自分はシビリアン・コントロールするために入ってきたという人はよくいました。しかし私が入庁した1971年当時の内局の職員は、幹部は他省庁からの出向者がほとんどで、防衛庁採用のキャリアの課長が誕生する1年前でした。キャリア採用組も東京勤務が大半で、地方に勤務するということもあまりありませんでした。しかし勤務してみるとシビリアン・コントロールには、自衛隊の活動する現場や軍事的な知識などがなければ仕事が出来ないことを痛感させられました。この経験を得て、後年私は内局の人間を地方でも勤務させるようにしました。また、イラクにも、カンボジアにも、国際貢献の時には制服(自衛官)だけでなく、彼らも必ず行かせるようにしました。制服が現場でどんなに苦労しているか、どういう環境の中にいるのか、それが知らないでシビリアン・コントロールできるか…と。こうした経験を若い時から蓄積してきたい人と、そうでない人は、ポストについたときの差が歴然としています。防衛省のシステムだと、各自衛隊の組織・定員・人事・教育・訓練・装備・衛生・予算・会計などの各分野ごとに業務を分担して、それぞれを一人課長補佐が係長、係員を部下にして仕切るのですが、その1人に対して、20人くらいの制服自衛官、例えば、航空機を買う場合、航空機の人間、調達の人間、教育の人間、メンテナンスの人間…それぞれのエキスパートを前にして審議を行います。相当な知識を持っていないと話になりません。ですから議論で正面から戦おうとせず、「お金がないから、そんなこと幾ら言っても…」「GNPの1%と決まっているのだから…」等といって済ませようとしてしまう。
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片岡: |
結局、若干の変化分だけが議論され、陸海空のバランスは固定化される…。
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.守屋: |
自衛隊では、陸の人は陸だけで一生終わります。海は海、空は空で全く違う。統合幕僚本部もありますが、統合では必要性が実際にないと、統合オペレーションは進みません。そういう中で、GNPの1%という上限枠があり、適切な議論もなされないとなると、旧軍と同じで、自衛隊内で資源配分を争うようになります。結局、予算は3分の一ずつとやった方が恨みっこなしとなります。そうすると、陸は15万人、海と空は4万人ずつですから、陸の装備費の割合は物凄く小さくなります。しかし収めどころとして比率がよくつかわれました。
この点は政治も同様です。日本はシビリアン・コントロールの名のもとに、安全保障の現場を忘れてしまっている…。現場を知り、専門的に学ぶには、長い時間が必要で、人が一生で学べるものは限りがあります。それなのに政治家がオール・ラウンド・プレーヤーであり続けようとする。だから日本の政治には迫力がない。更に安全保障の分野は票に繋がり難いので専門家が殆どおらず、官僚をコントロールできません。官僚は上手だから、都合の悪いことは教えない…。
マスコミも同じで、シビリアン・コントロールと言いながら、シビリアンとして持つべき知識を持っていない。国民、民族の将来に関わる安全保障問題は、国の大事、皆、知識と責任を携えて議論しています。
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片岡: |
そもそもシビリアンの中枢ともいえる東大ですら、或はだからこそ、軍事的なものに関する教育や研究がまともにおこなわれておらず、素養が培われてきませんでした。戦後日本は軍というものをあまりにタブーとして…。さて、防衛産業と関係について如何でしょうか? 山田洋行事件(注1)などもありましたが…。
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.守屋: |
実は全体的に見ると、防衛省と防衛産業の関係は甘いものではありません。例えば防衛産業を担う会社でも、会社案内でそのことに触れていないことも多くあります。また社内でも防衛関係の部署に異動となるとモチベーションが下がるとも言われていました。どうしてそうなったのでしょうか? 戦争に負けて軍人が帰ってきたときに、徴兵された人は帰ればまだ職がある人も多かったのですが、職業軍人はそうはいきません。失職です。「貴方たちは軍人だと威張っていたが、それで今何が作れるのか?」と。同国人からの手のひらを返したような仕打ち…。同じことが、重工業でも起きました。GHQが日本を徹底的に抑え込むために、飛行機など最先端のものは、すべて工場閉鎖。機械も全部使えなくなった。航空機などを作ってきたような人間は使いようがない。大量に首を切られ、その後も冷遇され続けました。失職が人にとって如何に辛いか。自分は勿論、家族も食べられない。物を持っている人がはまだいい。ない人はどうしたか…。やがて朝鮮戦争が始まり、米軍の航空機や大砲、戦車の修理のための特需が生まれ、また警察予備隊、保安隊もつくられ、軍需産業で働いていた人や軍人が呼び戻されます。しかし、酷い扱いを受けた人の中には「こんなことをする国民のために、会社のために働くものか」と戻らなかった人も沢山いました。こうしたことが企業の中にずっとトラウマとなっています。そしてさらに、赤軍派による三菱重工爆破事件(注2)が起こり、防衛産業は益々声を潜めました。
それでも、日本はやはり世界に冠たるもの作りの国です。米国も日本の技術力の凄さを認めています。今後、競争を取り入れていけば十分世界に通用します。これまで、日本は戦後の安全保障政策の中で「武器はだめだ」「武器はもの作りではない」といった考えかたが浸透してきました。しかし、これは独善ではないでしょうか。「武器を輸出しないのは平和国家の証だ」といいながら、ロシア、中国に対抗するためには米国の最新鋭機、ミサイルが必要だ…と、お金に任せてどんどん最新鋭の武器を買ってきました。武器はそれだけ切実なものです。しかし、日本の武器を欲しいという国には、日本には武器輸出三原則があるからと売らない。「武器を売ってはいけない」ということを追求していけば、自分も「買ってはいけない」となるはずです。そこをいい加減にしたまま、「武器を輸出しない日本は平和国家だ」といったところで世界はそうみません。勿論、大量破壊兵器や非人道的な兵器は問題がありますが、それ以外のものについては本来、制限を設けるべきではないと思います。
さて、最近、東レの炭素繊維が航空分野で注目を集めていますが、航空機に炭素繊維を用いるというのは、元々は防衛庁の技術研究本部がFSX(次期支援戦闘機)開発のために発案したものです。最初は散々バカにされ、米国からも「炭素繊維で戦闘機が作れるのだったら、どこでもやっている」等といわれました。しかし、東レは防衛庁の補助金を活用しながら、何度も何度もやり方を工夫して、技術を確立しました。ところで当時、私は航空機課長でしたが、最初に集まった日本人技術者の格好が今でも忘れられません。皆、ノギスを持ってやってきたのです。米国の最先端のコンピューターを用いた設計に触れた彼らの衝撃は、鉄砲伝来と同じだったのではないでしょうか。
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片岡: |
日本は、米国から導入した軍事技術を民間に移管させることで、家電メーカー等を大きく育っていったそうですね。
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.守屋: |
その通りです。技術には国境もないし、軍民の区別もありません。それを本当は知っていながら、「軍事は扱わない」という、そうしたことがこの国を蝕んでいて、これはもはや差別といっていいもので、未だに尾を引いています。負けたら皆だめ、勝てば官軍という判で押したような発想はやめるべきです。世の中、そんなに単純なものではありませんし、そこには、なぜ負けたのかといった真実の究明もなくなります。
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片岡: |
根本的な問題を避ける風潮は、脆弱な法体系の上に自衛隊を放置していますね。
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.守屋: |
有事法制や軍法会議等の問題もありますが、それ以外にも、毎年、数多くの法案が提出されますが、その中には、自衛隊の任務遂行上、支障となるようなものもあります。そうした場合、法令作成協議で話し合って特例措置などを手当てするのが通常ですが、自衛隊に特例措置を設けると、そのこと自身が争点となり、法案が成立しなくなるので防衛庁の主張は無視されるのが常でした。更に衆議院予算委員会等では政争の具としても頻繁に利用されてきました。野党は自衛隊・防衛庁を遡上に出すことで、予算委員会の審議を滞らせ、3月31日までに予算が決まらないようにする。そうなると、景気などにも影響を与えるので、大蔵省はやきもきする。うした時、当時は予算委員長辺りから機密費で、質問を辞めるなら200万円…。反対に政治家側から「今回は調査にお金がかっているから3本(300万円)は欲しい」と具体的に要求する人もいたようです。こうなると必要な法案も、とても出すことが、できなくなっていきます。このように防衛省も、色々な問題を抱えていますが、まずは制度として、職業として選んで誇りを持って辞めていけるような職場にして欲しいと思います。
ところで、防衛省には各省庁の利権が物凄く入り込んでいます。例えば、経済産業省は、今はなくなりましたが嘗て武器等製造事業と航空事業の許認可権を持っていて、彼らが認めなければ作れませんでした。当然、そうした会社に役員などとして天下っていましたが、自衛隊は沢山の航空機を作っていながら、そうした会社に取締役としていった人は一人もいません。顧問等はいますが…。
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片岡: |
自衛隊員は職務の性質上、どうしても退職年齢が低く、特に一般の隊員の再就職問題は重要ですね。
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.守屋: |
国家公務員60万人のうち、防衛省は27万人いて、毎年、1万人が辞めていく。そのうち、8割が再就職を希望していますが…。このため離職者の再就職支援の機関を作ろうとすれば、そこには労働省の認可が必要で、労働省の人が役員として入ってくる…。
一方、警察官は、30万人(地方公務員を含め)いますが、退職の問題はあまりありません。その理由の一つが車検です。車検制度があるのは先進国では日本だけ。そうした車検工場や関連企業に警察OBや彼らの斡旋で入った社会部記者が天下っていく。それから免許の書き換えや教習所などもそうです。また警察が持っているのは、SPです。SPは政治家等のダーティーな部分を握る。これも色々な意味で大きい。
また防衛省の予算は何兆円で、物を買う予算で、各省庁で、こんなに巨大なものはありません。しかし、防衛省は、その取扱銀行を防衛省が選ぶことはできず、財務省が決めています。そういう利権は物凄く、一端預かっているだけで、大変な金利も貯まります。それを四半期ごとの頭に分けて、つまり、そのカードを4回使うわけです。官僚が作り上げる仕組みは凄まじいものです。
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片岡: |
貴重なお話を有難うございました。
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〜完〜 (敬称略)
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