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2015年(平成27年)はどういう年?

2015/2/1

内藤 彰信

 毎年、この時期になりますと、どういうわけか関係各位の皆さんに、今年はどう云う年になりますかと聞かれ、ご披露を始めてから、十二支で例えますと、いつの間にかふた周り目を過ぎてしまいました。
と云う、次第でございまして、例年より、若干遅め乍ら、本年度の占いを少しご披露させて頂き度いと存じます。

 まず、占いは、そもそも遠い昔、殷の時代に、其の源流を持っています。この時代あたりから人々は長い時間をかけて森羅万象、世の全てを注意深く観察することで、物事にはことごとく一定の巡り合わせや、変えようの無い流れが、あるのではないかと云うことに気が付き始めたのです。
しかし、この殷と云う国は、基本的には狩猟民族国家でしたので、あちこちと転々して、いかんせん腰がなかなか据わらなかった。観察はじっくりと行うものですからね。

 時代変わって軍師太公望率いる周が殷を滅ぼします。ご存じのように太公望は占いに大変通じておられた、易の大家でもあったのですが、更に漢の時代に入ってから、術としての占いは飛躍的に発展して行きます。漢は農耕民族らしく、落ち着いて物事を計画的に考え、行動しました。まさに単なる占いから暦学に進化発展を遂げることとなります。

 易の歴史は古くは、伏羲(ふっき)が作りました先天八卦から始まり、後に文王が後天八卦応を完成させます、そして現代の白陽八卦に至っているわけです。

 その意味から申し上げるなら、本日私が皆さんにお話する占いは、この暦学のレベルに達した厚みのある占いとでも解釈頂ければと存じます。従い、ちょっと其の手法につき能書を垂れることをお許し頂きたいと思います。

 占いの基本は干支(えと)です。干支は十干(じっかん)と十二支から成り立っています。巷間よく、あの人は猪年生まれだから猪突猛進タイプで闇雲に突っ走るので要注意です、と云った類の話を小耳に挟むことがありますが、このような例えは、必ずしも当たっていません。十二支は、子(ね)から始まり亥(い)で終わる12年間周期の流れですが、ねずみや牛などのエトは、後代の人が勝手に当てはめたものに過ぎず、各動物の性格やイメージなどから、部分的に当たっていると思われるかも知れませんが、実はエトの動物と、其の年の傾向や人の性格の間には、さほどの相関関係はないのです。だいいち、お前さんはトリ年生まれなんだから落ち着きがないんだよね、などとこじつけられたら、気の毒ではありませんか、
一方、十干は、数を数える時の単位で、大げさに云えば数の原理乃至は数理と云えます。もとを正せば人間の指が両手合わせ10本あり、勘定をする時に、「物」と「数」とを対応させながら数えると云う基本動作から来ているんです。
 つまり、数を数える時のもっとも身近な計算器だったわけです。右手の親指は甲、人差し指は乙と云うように、順番に小指の戊(ボ)まで行きますと、今度は左手親指の己(キ)に移り小指の癸(キ)までたどり着きます。中国ではこの両手の指は「浣(かん)」あるいは「澣(かん)」と表記されていたのですが、いつしか「干(かん)」と称されるようになったのです。指10本の「十」と両手の指を意味する「干」を合わせた造語が、「十干」と云う訳であります。
 よく「きのえ」とか「きのと」とはどう意味ですか、と云うご質問を頂きますので、一寸お時間を頂き、折角ですから種明かしをさせて頂きたいと思います。
 易学の基本は「陰陽五行」です。1/3/5/7/9は奇数ですが、易では奇数と呼ぶ代わりに「陽」といいます。一方2/4/6/8/10は偶数とは云わずに「陰」と呼びます。しかし、この陰陽の意味は単なる数の性質を表すだけに止まりません。「陽」は剛、男、父、兄、天、能動的、春夏とすれば、「陰」はこれらに対応し柔、女、母、弟、地、受動的、秋冬となります。世界を二元論で捉えているわけですが、実は易の思想はもっと深いのです。例えば絶えず変化しながら季節は循環して行きます。春には夏が息づき、夏には秋が準備されているわけです、陰には陽が息づき、陽のなかには陰が既に出番を待ち構えているのです。変化のなかに存在する不変の法則、ちょっと大袈裟な言い方ですが、宇宙の秩序や法則と云ったものなのです。
 十二支も十干と同様に、草木の種子が芽をふき、成長しやがて枯れて行く一連の自然の営み、人間社会の営みを段階を追って観察した様子を子から亥の文字で示したものと考えています。10で一巡する十干と12で一巡する十二支の組み合わせは60通りで、自然、人間社会の営みと流れをこの60通りの配列に凝縮し、解釈を磨いて来たのが易学の基本です。

 さて話しを本論に戻しましょう。広辞苑で「干支」をひいてみますと、そこには(「兄(え)弟(と)の意」)と出ています。そうです、「兄弟」の正しい読み方は「エト」なのです。これを十干に当てはめます。まず、最初の甲は「一」番目ですから奇数の「陽」、即ち「兄(え)」が振り当てらえます、次の乙は「二」番目ですから偶数の「陰」が振り当てられますので、「弟(と)」となります。この法則に基づいて最後まで続けますと、三(奇数)番目の丙は兄(え)」、四(偶数)番目の丁は弟(と)」、更に戊(ボ)=兄(え)、己(キ)=弟(と)、庚(コウ)=兄(え)、辛(シン)=弟(と)、壬(ジン)=兄(え)、癸(キ)=弟(と)となります。
 陰陽に続き重要な要素に五行という考え方があります。起原は中国固有のものではなく、遠くバビロニアにあるとの説もありますが、この「五」は「五つの材料」で人間が生きて行くうえで欠かすことが出来ない材料や道具を、木・火・土・金・水としてシンボライズしたものです。我々は‘「流行」に取り残されないように’などと、日常的に言いますが、この場合の「行」は、「めぐる」「めぐりめぐって変化する」という意味です。また「行用」の「行」には「行う」「利用する」「使う」の意があります。総じて「行」とは天をめぐり、人間が利用することを意味しているのです。易学では、五行即ち木火土金水が、天の監視のもと、天上を絶えることなく駆け巡り、其の五気を天が人々に与えることで、人間は生命を保ち、更にはこれらを材料や道具として日々の生活に役立てることができると考えるのです。「五」を単位とした様々な組合わせによって物事が成り立つと云う発想は、古代からあったようです。

 さてそろそろ、この話しの纏めにかかりましょう。この五行を陰陽(えと)と組み合わせて配分すると、答えが出ます。

●木→甲乙
甲は (木)きの 陽(兄)
乙は (木)きの 陰(弟)

●火→丙丁
丙は (火)ひ の 陽(兄)
丁は (火)ひ の 陰(弟)

●土→戊己
戊は (土)つち の 陽(兄)
己は (土)つち の 陰(弟)

●金→庚辛
庚は (金)か の 陽(兄)
辛は (金)か の 陰(弟)

●水→壬癸
壬は (水)みず の 陽(兄)
癸は (水)みず の 陰(弟)

 さて、お待たせしました。それでは早速、平成27年、西暦2015年度の世を、占ってみましょう。
平成27年の干支は、十干が乙にあたる年回りとなっています。この十干は読んで字のごとく、全部で10段階あり、甲から始まって癸まで行きますと、また再び最初の甲に戻ります。これを10年周期で永遠に繰り返します。この10の段階をそれぞれ、甲・乙・丙・丁・戊(ボ)・己(キ)・庚(コウ)・辛(シン)・壬(ジン)・癸(キ)と呼びます。
 平成27年度の十干である乙(オツ)は、甲(コウ)から始まり癸(キ)で完了する流れの中の2番バッタ−で、日本では昔から、’きのと’と読んで居ます。
 一方、十二支は未(ひつじ)年ですので、十干(じっかん)と十二支を合わせて、「乙未」(きのと・ひつじ)の年周りとなります。余談になりますが、この十干と十二支の組み合わせは全部で60通りしかありませんで、よく還暦のお祝いなどと云いますが、これはめでたく一巡しましたね、ということです。赤い「ちゃんちゃんこ」を着てゴルフをやる、などと洒落たことを言いますが、これは今でも中国では赤ん坊が生まれますと赤い布で包(くる)む習慣から来ているんですね。

● 「乙」(きのと)は、先程、お話させて頂きましたが、甲に続く十干の2番目に位置しています。甲から始まり、癸(キ)で終わる十段階は、一本の草木に例えられた、生命体の一生を表しています。甲は甲冑と云う言葉がありますように、未だ殻に閉じ込められていますが、草木の芽としてやがては殻を破って顔を出す一歩手前の状態を意味する象形文字なのです。乙は芽は出たのですが、外の空気が冷たく、風にも煽られ、未だひ弱な状態です。「乙」の字がくねっているのは、其の様子を表現したものです。間を飛ばして、「戊(ボ)」ですが、これは草木が繁茂して旺盛な様子です。「己」は長い糸の先が曲がっているのですが、起の原字で、草木が伸びて行く様子を表現しています。「辛」まで行きますと、これは針など尖った物で刺激するところから草木が枯れ始める状態を表しています。「壬」は女性が妊娠した形を表しており、内部に新しい生命(種子)を妊らんだ状態で、これが「癸」まで行き着きますと、種子の内部が成熟した状態となります。このように十干とは、草木が硬い殻を破って芽を出し、やがて成長して、葉が繁り次の世代へ種子を残し枯れ果てて行くと云う一連の営みを10の段階に分けて表しているわけです。凄い観察力と洞察力ですね。
 実は2014年は甲から始まる、向こう10年間のトップバッターだったんです。本年2015年度は乙で来年2016年度は丙で10年one cycleの未だ三段階目ですので、これは事が成就するにはもう少し我慢と努力が必要と云うことになります。
 ここで、話しをもう一度整理してみましょう。「乙」と云う字は昨年の「甲」で硬い殻を破り出て来た若い芽が、外の寒気が未だ強く、真っ直ぐに伸びかねて曲がりくねっている象形文字で、紆余曲折の状況を表しています。
 亦、乙の形をした獣骨のヘラの事をさし、糸かせの糸のもつれを解きほぐす道具の形を表しています、これは、それで乱を治めると云う意味があります。

● 「未」(ひつじ)と云う字は、分解しますと「一」と、「木」から成っています。上の短い一は、木の上部の枝葉が繁茂している様を表しています。枝葉が繁りすぎると、日光が遮られたり、風通しが悪くなり成長が妨げられます。それで「昧(くらい)」と云う字になります。不必要な枝葉は剪定し、日当たりを良くしなければ成りません。
 松江藩主の松平治郷公は「不昧(ふまい)」と号しました。昧くなく明るくと云う意味です。茶人としても有名ですが、藩の財政を立て直しました。
 ここまでの話しをもう一度、整理してみましょう。
 「乙」の字の最後がカギのように上に向かって跳ねていますが、此の部分は土の中で、地上に出た未だひ弱な茎や新芽の部分が、風雨で吹き飛ばされないよう、一本立ちするまで必至で支えている様子を示す象形文字です。
 「未」は、未だ成らず、と云う意味ですので、両者を合わせて総括しますと、物事はそう簡単には成就しないとの時勢を暗示しているのです。
 本年2015年は紆余曲折、曖昧模糊の状況が続きますので、アベノミックスの効果が目に見える形で、顕著には出ません。また何人も拙速に結果を求めるべきではありません。大切なことは、地道に目標に向かって努力を積み重ねることです。そうすれば、来年2016年の丙申(ひのえ・さる)には必ず良い結果が目に見える形で確認出来るのです。
 「丙」は炳(あきらか)で、「申」は甲の田の部分が由のように突き抜けていますので、伸びると云う意味があります。本年度はなかなか思ったような展開にはなりませんので、何かと苛立つことも多いことでしょう。しかし乍ら、ここは忍耐をもって知恵を絞り、一つ一つ乗り越えて行くことが、良い因縁を作り上げることになります。この努力さえ怠らなければ、良い結果が大いに期待出来るのです。いくら努力しても結果が得られない何ともし難い應運もありますが、「乙未」と「丙申」が二年続く年周りは、努力すれば報われると云う黄金の組み合わせなのです。
 前後の年周りの組み合わせからも、物事を始めるには良い時です。
 さてそろそろ結論を纏めましょう。平成27年度を推測します。デフレ経済から脱却しようと安倍政権は大幅な金融緩和政策を行って来ました。三本の矢と云う経済政策も矢継ぎ早に打って来ました、平成26年4月に景気にはマイナス効果の消費税も引き上げ、数多くの法案が上程されました。しかしながら、今後は少し整理し優先順位を決め審議を尽くさなければなりません。10%への消費増税は、景気も未だ弱いので、もっと体力をつけてからの方がよく、先送りは正解です。新規プロジェクトや事業投資には良い年回りですが、細かい事にも気を配り丁寧に大事に育てて行くことが出きれば、やがて大きく育ち、発展の礎を築くことが出来ます。未だ弱々しい新芽がすくすくと健康的に育つよう環境を整えてあげることが大切です。目先のことにも目配りが必要です。試練の年周りでもありますので、辛いことも決して少なくありません。途中で投げ出すようでは、滅多にない幸運の種を自ら潰してしまうようなものです。忍耐強い地道な努力の積み重ねが、やがて功を奏します。いきなり事が成就することはありませんが、早ければ平成28年(2016年)、遅くとも平成30年度(2018年)頃までには結果が出ます。成果の大小は本年度の対応次第で決まります。

 一方で、この2〜3年は、地震・津波・強風・火山活動が活発になる周期に入っています。特に未年は辰と良く似た現象が起こりますので、地震が起きる周期ですので注意が必要です。

 時世の知らしめるところを率直に、易學の観点から申しあげた次第です。

以上

(2015年1月2日 台北市 内藤 彰信)

追記

 以上の占いは旧暦に基づいておりますので、少なくとも本年明けの1月いっぱいまでは、昨年度の霊気が漂っております。

 

著者紹介
1948年生まれ。三菱商事株式会社油脂部部長代行、国際埠頭株式会社代表取締役社長等を歴任後、現在は、中央大学特別客員講師、実践中學/高校 常任理事、丸全昭和運輸倉庫株式会社取締役を務める。易學学術院(台湾)總裁。
 


 

 

 

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更新日:2015/02/01