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中国ビジネスの行方 香港からの視点
乱開発の果て
2014/8/1
湾仔
改革開放政策以来、沿海部から内陸にかけ緑は全くなくなってしまった。工場団地、その他もろもろの乱開発の結果だ。中国の経済学者は改革開放政策のウミと表現しているようだが今回は乱開発されたゴルフ場の強制撤去を巡る中央・地方政府の争いについて考えてみたい。
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テーマパーク、ショッピングモールの過剰とか工業団地の過剰は従来から指摘されている。最近ではテーマパークのバブル化が問題となっている。中国各地に欧米の有名建造物のニセものが氾濫している。マリリン・モンローの地下鉄からの風でスカートがめくれあがっている写真はよく見るが、これとそっくりな、しかも10メートル以上もある巨大な立像が建設されてから間もないのに、当局からぶち壊すよう強制されたという。造ろうと考えた地方政府の高官もどうかしているが、出来上がったばかりのものを何としてでも壊そうとする中央政府の高官も杓子定規で如何にも役人の考えることらしい。テーマパークは集客力次第だが、アメリカですら400ヶ所程度とのことだ。いくら人口が多くても大半はカネのない人々の中国で既に2,000ヶ所あり、更に開発中のものを入れると大変な数になるらしい。テーマパークは地方政府の承認だけで建設できるので、表向きは公園として高級住宅など不動産開発と称してテーマパークを次々と造成している。一方中央政府も習政権の方針もあり、これらの乱開発にストップをかけたいところだが中央・地方の官僚組織のそれぞれの縄張り争いもあり簡単には実行できないのが現実のようだ。
# ゴルフコースの場合
中国全体のゴルフ場の数は明確な統計がないので不明だが、深センの大手developerによれば639のコースがあり新規開発禁止例がでた2004年から3倍に増えたとしている。但しこの数字は広東省または華南地区のものかもしれない。ゴルフ場の名目で業者が土地開発を行った結果ゴルフ場らしきものが乱立した。又2003年のSARS騒動以来戸外での運動が良いとされ中国人富裕層のゴルファーが数多く現れた。北京近郊の北京ゴルフクラブはかつて日本人専用のようなものであったが2003年には中国人が日本人の数を抜いて首位になったようだ。また、中国人は週日にもプレイするので同クラブは長年の赤字から脱出したと聞いている。改革開放政策の始まった時代には日本企業のみならず欧米の企業誘致にはゴルフ場が必要と誤解していたのか広東省から北の北京、天津、大連までゴルフ場開発ブームがあった。実際に北では冬は凍り付いて半年近くゴルフはできないが、天津などでは田圃をつぶしてゴルフ場にしたため、冬になると氷結してナイスショットならぬアイスショットなどとからかわれていた。社会主義の問題点は造っては壊す“の繰り返しで、今の北京とか上海の動物園が昔はゴルフ場であったり、競馬場が工業団地となったりと造っては壊すと言う具体例が各地にある。ゴルフ場の場合、広大な土地と大量の水を必要とするので開発が困難で北京等でも無理に川のあるところにゴルフ場を造り、冬は川の流れがなくなり折角植えた芝生も枯れて土もボコボコになったところに再び芝を植えると言った苦労の積み重なったコースだ。ゴルフ好きは中東と同様、人工芝の小さな布きれを持ち運び、ボールを打っていた。ただし、大量の水を放水し、大量の肥料を撒いた結果、公害問題の発生もあり当局も対策に乗り出さざるを得なくなったのが現状だ。
それにしても中国のゴルフ場の特色は別荘のような高級住宅を隣接して作ることで公園プラス住宅として開発許可が取れたのかも知れない。これらの高級住宅はハリウッド近郊のアメリカの高級住宅まがいで、その後高級官僚などが利殖用に何軒も所有したとされている。深センのMission
Hillsは数年前に108ホールから180ホールに増設した。世界でも類のない一つのゴルフ場に10コースと言う、何の目的で造ったのか疑問に思っていたが恐らく高級住宅別荘地として許可を取ったものだろう。現地では土地を取り上げられた農民に貸与していると説明があったが、人影もなくおそらく政府の高級幹部に贈ったものかもしれない。
# 掘り返されたゴルフ場
6月30日の香港紙South
China Morning
Postに北京の郊外(北東部)の朝陽区の60ヘクタール、18ホールのゴルフコースが、当局の命令で3月からコース全体を掘り返すべく労務者が入り今や岩石と泥が山積となったショッキングな写真が出た。豪華なクラブハウスも取り壊されたとのことだ。他の2コースも国家発展改革委員会の命令で取り壊し作業に取り掛かっているという。更に他の1つはエコパークとして再生、別のコースは茶の栽培園に転用と決まったようだ。
# 問題は国家発展改革委員会まで表に出てきたこと
元々2004年にゴルフ場新設禁止令が出ていたらしいがdeveloperはこれを無視して次々とゴルフ場を建設したらしい。10年たって国が乗り出したわけだが、この間にdeveloperも十分儲けたようだし、関係当局も十分潤ったので国が乗り出したものと考えられる。但し政府も5月に独りよがりの(would-be)違反者に警告を与え更に教育をするためこの破壊命令を出したと説明している。問題は国家発展改革委員会まで表に出てきたことだ。この委員会は中央政府最高の経済その他政策の決定機関であり、勿論不動産問題も委員会の頭痛の種ではあろうが、地方・中央の監督官庁が複雑に絡み合った問題は党のトップにまで持って行かねば解決不可能となっているともみられる。単純に考えれば北京市は天津、上海、重慶などと共に、日本流にいえば徳川幕府の天領のようなもので中央政府の直轄で、このレベルの長は大臣級でもあり、何か問題があれば副総理或いは習近平への相談が必要となる。喩えが適切ではないが目下上海自由貿易区に期待が集まっているが、一向に進展がない(拙稿、2月1日参照)これは肝心の実施細則が発表されていないことによるものだが、政府内の関係部門間の調整が簡単に行かないことによると見られている。このような大規模の構造改革ともなると、習近平まで上げることが必要だが、彼が全ての権限を握ろうとして、おそらく超多忙でそこまで見切れないのではないかと推測される。ゴルフ場はそこまで重要案件でもないので国家計画委員会が出てきたものであろう。
違反者に中には大国営企業の関連企業もあるとのことだが、developerに言わせると地方政府にとっては土地の売却と富裕層の呼び込みは絶対必要なので、ゴルフ場兼高級別荘もこれに当たると言っている。中央政府の錦の御旗は水資源不足などの理由だが、今回の5ヶ所のコース破壊命令は上記委員会の強い意志の現れと見られている。
Developerは既存のゴルフ場をスポーツセンターとか旅行者向けリゾート、高級別荘地に転用すると言っている。いずれにしてもゴルフコースでは今後許可が下りないので、他の巨大なビルなどの名目で富裕層の誘致に努めるのだろう。中央政府のひざ元の北京とは別に、広東省のあるdeveloperは安く土地を入手しゴルフコースの周りの別荘を高く売りつけ利益を得ていたので今後は更に別荘開発に努めると言っている。今後も広東にコースを造り周りに超高級別荘を100棟つくり一棟7千万元で売るつもりだと豪語している。上に政策あれば下に施策ありの国だが、今や中央と地方は全く別の路線を進んでいるようにも見える。
以上
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