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中国ビジネスの行方 香港からの視点
 

香港の一国二制度を無視する習政権 

2018/1/1

湾仔

中国本土の国歌法が香港にも適用されることとなった。香港立法会(議会)は親中国派が多数なので北京政府案が成立する可能性は大きい。中国国歌は元々義勇軍行進曲なので香港の若者にとっては時代離れした、現実とは乖離した歌曲と捕らえられるであろう。これに対し替え歌やブーイング等「国歌への侮辱」として罰則を設けると言うものだが、実際にサッカーの国際試合などで香港サポーターが従来も中国国歌に対しブーイングを行う例が多かったが、これなども対象となる。実際に最近のサッカーの国際試合で香港側の観客が中国国歌にブーイングをしたがこれに対しアジアサッカー連盟は香港サッカー協会に3,000ドルの罰金を科したという。アジアサッカー連盟は中国側の意向を忖度したのかもしれないが、香港側は香港基本法(憲法)の改正が必要で、これも北京政府は押し通すであろう。現在の習政権は独裁色を益々強化させ向かうところ敵なしの状況で、香港に関しても一国二制などは最初から無視して自らの体制に都合の良い様に習の取り巻きの官僚も習の意向に沿った施策を実行している。国歌法に対し香港紙は揶揄して香港は現在一日150人の中国人移民を受け入れる事となっているが計算上20年もすると香港人より中国人の方が多数となる,要するに中身の入れ替えのごときもので何れは中国領となると北京政府は踏んでいるとしている。
Carrie Lam(林)新行政長官は初の女性CEOで香港政府高官時代から穏健な民主派で敬虔なクリスチャンと見られている。今のところ北京政府と摩擦もなく順調に職務をこなしている。Lam CEOを支援しているAnson Chan女史は“今のように香港の自治に絶え間なく干渉し自由な言論や基本的人権を制限すれば反発が強まるだけだ”としているが、実際に香港の若者は習政権に強い反発を示している。香港大学内(アジアの大学ランキングでtopを争う名門校となった)では雨傘運動のリーダーを輩出、香港の民主化運動の核となり香港独立論が校内で公然と発表されるようになった。要するに習政権と香港のいずれかが生き残るのかという我慢比べのような状態だ。(同じ事は台湾でも「天然独」と言われる台湾独立運動がある)

#香港内部での中国離れ
中国最大のcontainer輸送会社COSCO(中国遠洋海運)が香港の同業OOCL社を63億ドルで買収との報道があった。
OOCLは香港の名門船会社で初代行政長官の董建華が長官になるまでCEOであった。この結果、COSCOはAPモラーマースク(デンマーク)、スイスMSCに継ぐ世界3位の地位を確保することになる。但しcontainer operatorは世界的には統合に進みつつ有り、中国当局が何を考えているのかむしろ批判的に見られている。買収と言えば香港の代表的英字新聞South China Morning Postも1年前にアリババ集団のジャック・マーに買収為れた。彼は浙江省出身で習近平に近いと為れているが言論面で香港を締め付けようと考えているのかもしれない。2016年にはCoca Colaが中国本土のbottling事業をSwireと中国の国営食糧貿易の最大手中糧集団に売却した。Swireは元々bottlerの最大手で事業拡大のためと思われるが中糧集団はbottlingとは全く無関係で要するに国営大手企業の業容拡大を狙ったものと考えられる。香港の最大財閥たる李嘉誠は不動産―港湾経営など57ヶ国で事業を展開していたが中国本土の不動産物件などはかなり前から撤退し、最近では英国のガス事業とか全く別の事業に投資している。香港ではフィンテック企業への投資に動いていると言われている。一方、香港財界で最近まで活躍していたVictor Fung一族の会社,利豊は、美容品、家具、セーター等の貿易事業を中国の投資ファンドに売却すると発表された。家具などは中国から商品を仕入れ欧米に卸していたが利益率も低下し本体と切り離しを決めた。更に利豊は米欧の流通大手やファッションブランドから委託を受けて衣料品や雑貨を納めるソーシングビジネスの最大手であったが(これが為、アジア全域に協力工場網を活用したsupply chain 管理を主力としている)新経営計画ではデジタル分野に積極投資をする方向を打ち出している。

#注目すべきドイツの動き
9月下旬のドイツの総選挙はメルケル政権が単独で過半数を制する事ができず新たな連立を模索する必要がある。メルケルによってもたらされた移民の急増問題が指摘されるが、実際は対米関係の悪化が大きな要因だ。オバマ前政権とは独米蜜月といわれたほどであったがトランプ政権の誕生と共にドイツのトランプ嫌いが昂じて米国と距離を置き、その反動でロシアとの接近が目立つようになった。これは独米関係が服従から造反への課程で有り過去のシュミット、コール、シュレーダーの対ロシア政策の否定で有り、NATOやEUがロシアへの敵対を続ける中,独得の外交政策を打ち出すためロシアへの経済制裁の解除も射程に入れ始めたと解説する評論家もいる。ロシアとの深い関係を指摘されているシュレ−ダー前首相がロシア最大の資源会社ロスネフチの会長に就任した。このように反米路線に急傾斜するドイツ政界・マスコミに中国・韓国のロビー工作が浸透している。誠に由々しい事態にある。ドイツには従来から日本批判があったが最近では“南京大虐殺はあった”“従軍慰安婦は性奴隷”と言った中韓の宣伝が染み渡り日本の悪いイメージが定着しているように見える。メルケルは「人道」「人権」をあまり前面に出さなくなり中国非難どころかAIIBを推進し中国の一帯一路構想への協力に前のめりになりドイツでは大分遅れて中国ブームが起きている。

#中国の欧州企業買収
中国の2016年の欧州企業買収などの直接投資は350億ユーロ(約4兆6千億円)と言う巨額に達している。ドイツの大手ロボット企業KukaやEEWエネルギー,半導体のアイクスロトン社など中国への身売りを承諾し,先端技術が中国に渡り軍事転用為れるのではないかとの懸念でEU始め先進諸国に衝撃が走った。ドイツ自体は反米感情の高まりと共に親ロ路線への急傾斜が顕著になっている。一方、フランスのマクロン新大統領はEU強化、ユーロ堅持などEUにおける主導権をドイツから奪うことを露骨に示すようになり実際の政策面でも非協力的になりつつある。 #日本はドイツとどのように向き合うべきか 歴史的にはドイツから先進技術の導入なども有り日本ではドイツに好意的な人々も多い。英語以外の第2語学にドイツ語を専攻する人も多かった。歴史にifは禁物だが日英同盟を蹴ってドイツ・イタリアと組んでしまった旧陸軍を責めても意味ないが軍部以外でも独伊との同盟に歓喜の声を上げていた人も多かった。結果は日本の敗戦につながったが筆者はドイツとは組むべきでないと考える。日英同盟によって日露戦争で到底勝ち目がないと見られていたロシアに日本は勝った。今,英国のEU離脱問題でマスコミは騒いでいるが、英国も米国も大陸には干渉しないというベースがある。不幸にして日本は中国大陸に手を伸ばしてしまったが,このあたりは英国に学ぶ必要がある。香港紙によるとドイツの最近の中国傾斜は旨く行かなくなった場合、日本に押しつければとの見方もあるようだ。海外買収で巨額の負債を抱えている中国民営の海航集団の最大株主のファンドの会長にドイツのレスラー元副首相〔経済技術相兼務〕が就任した。彼の登場で信用を回復したいとの思惑とも言われている。海航の場合、習近平主席を助け汚職一掃に務めた王岐山一族が大株主ではないかと疑われている。何れにしても海航もドイツの資金で財務状態の改善を行っている。フォルクスワーゲンも更に中国傾斜を加速させているしいろいろな形で日本企業を引きずり込もうとするかもしれない。この点では日本自体が歴史の教訓を十分に取り入れ独自の方針を打ち出すべきと考える。最先端の民主主義制度から独裁者を生み、その独裁者に全ての戦争〔第二次世界大戦〕責任を押しつけた国だ。         


 

 

 

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更新日:2018/01/01