知財問屋 片岡秀太郎商店  会員登録(無料)
  chizai-tank.com お問い合わせ
HOME 右脳インタビュー 法考古学と税考古学の広場 孫崎享のPower Briefing 原田靖博の内外金融雑感 特設コーナー about us  

 

中国ビジネスの行方 香港からの視点
 

灰色収入をどのように見るのか   

2018/9/1

湾仔

中国の経済統計が信用できないと言う話はよく出るが、国家統計局が自らの責任逃れのためか、各地方政府から上がってくる数字をベースにGDPなどを算出している(一切統計には手をつけていない)と言っていた。ところが習指導部が力をつけてくると国家統計局もそれなりの仕事をすべしとなり鉱工業生産高、小売売上高、企業利益などを独自に公表しだしたが公表値と計算値が大きく乖離するなどの問題を次次と抱えるに至った。全国31地区で見ると内モンゴル、河北、青海、雲南、吉林の5地区は実質成長率が名目成長率を上回った。吉林や内モンゴルは名目成長率がマイナス、物価が上昇しているのに不自然だ。今年度から実態に近い域内総生産を出し始めたが17年までの水増しをしたと思われる数字はそのままだ。従って名目成長率が実質成長率を下回る。そこで水増しの訂正が行われているのではないかと疑われている。嘗ては全体の9割の地区が国を上回っていた。1~3月の実質成長率は国が6.8%でこれを上回ったのは31地区の内18地区で過去10年では最小だ。要するに地方の水増しを修正しつつあるのではと推測される。そのほか不自然な動きとして国家統計局が毎月公表する小売り売上高だ。実額と前年同月比の名目伸び率を公表するが今年から統計局が公表する伸び率と前年の額から計算した伸び率がずれている。高い伸び率は怪しいがこれも調整中なのかもしれない。一方企業利益は今年1~4月の累計では同期比15%増となっているが2017年1~4月から見ると6.6%の減少となる。その前までは公表値と計算値の動きはほぼ一致しているが、差が開いたのは昨年秋からだ。水増し修正で一部の地方政府が統計局に提出する企業利益が大幅に減ったと言われている。いくつかの統計の修正?は経済の不振を反映していると見ることもできる。 中国が毎月公表する鉱工業企業の利益について、国家統計局が過去の企業利益の水増しを修正したと認めた。企業利益の伸び率が一般経済情勢から乖離して高いので世間ではその不自然さを指摘する声が高かったが、小売売上高とか工業生産なども水増しを修正したの ではと思われる数字が並んでいる。2017年から統計局が公表する公表伸び率と前年の利益を元に計算した伸び率(計算値)がずれ始めている。セメントなどは好例だが環境問題で多くのセメント企業は廃業に追い込まれおそらく生産量は10%以上の減産でインフラ建設は 失速しているが生産量が落ちないのは不思議だと指摘されている。地方政府幹部の人事評価は税収とGDPで決まるのでこの点を直さない限りいくら水増しを修正しても意味がない。その後も過剰設備投資により多くの商品が過剰にさらされている。好況に浮かれる半導体業界で新たに中国の国策半導体メーカー紫光集団が目下台風の目となっている。  

#中国の半導体産業を襲う、国策半導体メーカー 紫光集団は武漢市にメモリー工場を建設したが、今後10年で更に千億ドルを投資するとしている。マスコミは米中貿易戦争と騒ぎたてるが実態は中国側に対抗手段がないのでそれ程大きな問題とはならないであろうが、中国は半導体国産化に向けて全力投球を始めた。紫光集団は韓国サムスン電子から4年遅れではあるが量産体制に入った。問題はその投資規模だ。資金力で最新鋭の製造設備を集めても最先端の半導体を安定量産できるかは別問題だ。そこで彼らはシリコンバレーや川崎市に拠点を設け先行企業の技術者を採用し、韓国や台湾の技術者を大量に採用し、更に技術特許についても米企業中心にいろいろ手を打っている。まさに20年以上前の週末の韓国行きの飛行機には日本人技術者が数多く乗っており、韓国企業に引き抜かれた光景を思い出す。いずれにせよ好況に浮かれた半導体業界もいずれ中国の過剰生産設備によって世界に供給過剰をもたらすのか、関係者は息を潜めて成り行きを見守っている。 話を国家統計局に戻すと、中国の問題は正規の白色収入のほかに汚職などによる隠性所得(黒色収入)が大きいことだ。目下、共産党員は9千万人強で政府の公表人口14億の1/4近くが官僚乃至は国営企業の幹部となっている。一般論として中国では汚職という概念は自由主義諸国のそれとはかなり異なり、官僚になれば職位に応じて正規の白色収入のほか黒色収入または灰色収入があるのは当然と考えられている。(自家用車保有量、住宅購入、個人海外旅行、銀行預金などから共産党員=上流階級)の個人所得の推計がいろいろある。いずれも全くの推計ではあるが、ある中国人経済評論家は隠性所得として2005年4.8兆元、(GDPの26%),2008年9.2兆元(GDPの29%)2011年15.1兆元(GDPの31%)と大幅に膨張しているが、一般人は政府関係者全員の灰色収入が大幅に増えていることを知っている。9千万人弱の共産党員に家族を足すと公表人口の10%近くが富裕層となる。彼らがその職権を使っていろいろな収入を得ていることは間違いない。上述の中国人経済評論家の隠性所得はこのような背景から出された物で、習政権が独裁色を強めれば強めるほど官僚機構は整備されるので灰色収入は際限なく増え続けると見て良い。 




 

 

 

chizai-tank.com

  © 2006 知財問屋 片岡秀太郎商店

更新日:2018/07/01