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中国ビジネスの行方 香港からの視点
大豆と豚肉価格の行方
2018/11/1
湾仔
米中貿易戦争と証券会社が特に騒いでいる。世界経済は安定成長を続け企業業績も拡大しているが株価は膠着状態が続いていた。中国はインフラ投資の落ち込みや個人消費の伸び悩みなど成長減速が明らかになっているが、前から指摘されているように関税引き上げ合戦を続ける余力はほとんど残っていない。世界最大の大豆輸入国である中国で沿海部を中心にアフリカ豚コレラが発生、感染が拡大すれば豚のえさとなる大豆粕の需要が減るとみて大豆相場を押し下げている。世界最大の生産地米国で好天により5年連続の大豊作となると米農務省は生産予想を上方修正している。
大豆の国際価格が一段と下落した。指標となるシカゴの相場は8月末1ブッシェル8.30ドルと7月につけた9年ぶりの安値に迫っている。主産地の米国で豊作とみられ、大消費国の中国で需要減との思惑から市場では売り一色となっている。
#大豆価格 大豆は搾油すると25%が大豆油となり、70%は大豆粕となる。大豆粕は飼料用として使われ目下世界最大の蛋白飼料とされている。
2017年の税関統計では穀物油の輸入は3550万トン、内大豆が3,285万トンで92%となっている。2017年の大豆輸入総量は9552万トンでブラジル5092万トン、米国3285万トン、アルゼンチン658万トン、ウルグアイ257万トン、カナダ205万トン、ロシア49万トンとなっている。この年はブラジル産が安く米国産は首位の座をブラジルにとられたが、中国の大豆自給率は20%で、25%の追加関税でコストが上昇しても代貸供給国を確保することは容易ではない。
中国の大豆総需要は1.54億トンとみると、世界の大豆生産量は4.85億トンで実に32%を中国が消費していることとなる。中国の大豆輸入量が1.29億トンの場合世界の大豆貿易量を2.1億トンと見れば実に61.4%が中国向けだ。中国政府発表では輸入大豆の全量が搾油用で搾油後の豆粕が家畜の植物性蛋白飼料となる。2017年の飼料用脱脂大豆の需要は6700万トンで、そのうち養豚飼料向けは49%と言われている。
中国の輸入は国有企業によっているので意図的に米国産以外の大豆の輸入を増やすとか、ひまわり、菜種パームなどの大豆代替品目の輸入を増やすことは可能。豚肉は過去の生産過剰により価格が低落している。
脱脂大豆のコストは飼料総コストの1/4をしめる。中国に輸入される米国産大豆に25%の追加関税が課せられると脱脂大豆も大きく値上がりし食肉価格は上昇する。米国の代替としてブラジル、アルゼンチン(両国とも干ばつで大豆生産が落ち込んでいる)両国とも米国産大豆100万トンずつ買い付けたとの噂がある。
中国の大豆は旧満洲地区で生産されるが農民は大豆生産にあまり興味がない。国産大豆の生産量は年々減少し、家畜飼料用の脱脂大豆は常に不足していると言った状態が続いている。
食肉の供給が需要に追いつかず価格も高騰するが、備蓄食糧倉庫の点検に一般国民も参加している。在庫の減少には地方政府は火災発生とか適当な理由をつけるが不思議なことに在庫は常に減少している。他方、江蘇省で豚コレラが発生。続いて12の省、自治区、直轄市で発生。米国内で収束の兆しはまだない。大豆に25%の追加関税は中国に多大の犠牲を払うことになるが、最終的に豚など食肉価格の高騰は避けられず、本件の推進部局は最終的に大きなpenaltyが架せられるであろう。
貿易戦争の直接の打撃で中国の輸入大豆の最大手が破産したとの話もある。中国全体の輸入大豆の1割の輸入をしていた輸入大豆の最大手だが大豆のみならず大豆粕の需要も低迷し業績が悪化したとみられている。もともと同社は地方政府を巻き込んで補助金の取得のみか金融支援も受けていたので民間企業とはいえ国営企業並みに見られていた。
既に本稿で触れたが今年は豚価格サイクルで見ると最低価格になる前の年で豚肉価格も低く安定するとみられていた。
ところが8月末に江蘇省の養豚所で前日まで健康そうであった豚が相次いで倒れた。死亡率が100%近い家畜伝染病、アフリカ豚コレラで想定していなかったであろうが、当局が乗り込んで来たのは9月2日、これまでの数日間、当局内で処置方法を巡って大激論が交わされたことは容易に想像できる。いずれにしても直ちに周辺を封鎖しおよそ1500頭の豚をすべて埋却すべしと命じた。その後も防疫拠点が随所に残り、車両や歩行者は消毒液のしみこんだシートの上を通るように求められた。
当局が厳戒態勢を解かないのはアフリカ豚コレラが畜産業だけでなく中国経済全体に打撃を与えかねないためだ。昨年の中国の豚肉生産量は5340万トン、世界の半分を占めるが、それでも足りずに100万トン以上輸入している。中国は米国との貿易戦争で豚肉に追加関税を課してしまった。増産を急いでもその後江蘇省、安徽省、遼寧省など30ヶ所で発生した豚コレラはその後も発生しまだ収束の見通しはたっていない。中国政府もまさか豚コレラまで想定しなかったと思うが、もし豚肉価格が上昇すれば、今や毛沢東を超えて、皇帝の地位にまで上る勢いの習近平に大きな打撃となろう。いずれにせよ豚コレラをどのように収束させるのか何でもありの共産党だが、これは見物だ。
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