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中国ビジネスの行方 香港からの視点
 

ファーウエイの先端技術について  

2019/5/1

湾仔

中国政府の一帯一路政策などと同様に日本では実際にファーウエイから追加注文があると期待した連中がファーウエイとも組むべきだとする論調に押されているが、筆者の見るところ本件は暫時米国の政策にfollowすべきと考える。
米国半導体大手のインテルがイスラエル寄りの姿勢を明確にしたが、1974年頃からインテルは380億ドルをイスラエルに投下し半導体などハイテク製品の部品を製造し積極的に供給を続けてきた。  
ファーウエイ(華為技術)の先端技術について米国は国防権限法を適用した。AI,バイオ、測位テクノロジ−、マイクロプロセッサー、次世代コンピューター、データ分析技術、ロボット、先端的材料などだ。これらの多くは日本企業との関連が深くICなどは米国の基本特許であるケースやクロス・ライセンス契約による技術が目立つため実際に米国が国防権限法の運用を強めれば強めるほど日本企業の対中輸出も自動的に縮小することとなる。台湾、韓国も同じような影響をうける。1月15日に米連邦議会の超党派議員が強力な中国制裁法案を提出した。米議会はトランプ大統領府より対中政策では強硬である。これは大統領の権限強化を求め米国の輸出管理法に違反した中国の通信メーカーを制裁することを目的としている。米国の議会、メデイアは「ファーウエイ」はスパイ機関だと言う確定的認識だ。更に従来のファーウエイ、ZTE以外の中国の通信メーカーにも規制の対象をひろげている。ファーウエイが米国携帯で第3位のTモバイルUSから企業機密を盗まれたと提訴され2014年に民事訴訟を起こした経過に当局が強い関心を示した。此がスパイ摘発につながり、正式に司法省のファーウエイ監視のもととなっている。
以上はWSJが詳細に報じている。さて米国半導体大手のインテルがイスラエルへのシフトを明確にしたが同社は1974年以来380億ドルをイスラエルに投下し、半導体などハイテク製品の部品を製造し、積極的に供給を続けてきた。最初のイスラエル拠点ではわずか5名の開発研究要員でstartした。その後インテルはエルサレムおよび同市の南西に主力工場を建て、CPU,フラッシュメモリーなど最先端部品を生産してきた。インテルの米国内主力はアリゾナ州、ニューメキシコ州など砂漠地帯にあるが理由は安全保障上とのことだ。このようにインテルの貢献によりイスラエルは軍事強国となり軍事汎用技術でも米ソと並ぶ次世代ハイテク技術開発競争で優位にたった。イスラエル財務省は公式に「半導体大手のインテルが巨額投資を決断した意味は大きく、予想もしなかったことでありイスラエルの技術的飛躍に繋がる」と歓迎している。イスラエル財務省も財政負担を約束しており、40億ドルが予算化されエンジニア養成などに使われている。日本との関連ではハッカー防御技術、暗号解読などの分野でイスラエルとの技術協力が行われている。1月下旬に習近平は党中央学校で講演したが、黒色の鴨、灰色の犀に気をつけろと言いだした。黒色の鴨はあり得ない鳥、全く予期しないことがおこるとの意味で、灰色の犀は見慣れている風景が突如変貌すると言う意味のようだ。 犀は日頃はおとなしく灰色で目立たないが突然暴れ出すと凶暴性を発揮して手がつけられない。従って、彼の演説は「党が危険にさらされ権力機構が危機に瀕する恐れがある」という危機感の現れととれる。  
#内外に危機:対外的には米中貿易摩擦、ファーウエイ排斥、裁判沙汰という西側の動きがあり、中国は四面楚歌状態である。対内的には人権弁護士や退役軍人の抗議集会、ウイグル自治区の少数民族弾圧、企業倒産による大量失業、有名企業の社債デフォルトなどの危機を事前に予知し予防する対策を講じようとする目的がある。習近平の真意はともかく皆が等しく指摘するのは中国の過剰債務問題だ。過剰債務がどの程度かはいろいろ議論があるが、昨年8月のBIS統計では220兆元と発表されている。中国国家統計局は失業率を4.9と発表している。但し地域的には20%を確実に超えているとみて良い。今年の春節は例年より早い休暇に入り、鉄道、飛行機、長距離バス、ハイウエイは未曾有の人混みで大混乱に陥った。実態は「ゆっくり休養をとれ、連絡するまで上京しなくても良い」と言われ、給与不払い、当座の旅費だけ支給されたからだ。春節が明けて彼らが職場に戻ると工場は閉鎖されていた。中国ではよくある手口だ。 ビルの建設現場では労働者に3ヶ月給与不払いと言うケースも多く、現場では作業を止めている。製造工場では生産ラインが次々と座り込み抗議集会に占拠されこれが全土に拡大した。殆ど給料不払いが原因であり、経営者は雲隠れ、ビルの屋上から飛び降りてやると抗議する労働者も現れた。悲痛な叫びは「もう食事代もない」「故郷の妻子の医療費が払えない」こうした風景が中国あちこちで見られる。更に今年1月下旬鳴り物入りの巨大ファンド「中国民生投資集団」が運転資金に行き詰まり社債のデフォルトに陥った。灰色の犀が暴れ出したと見るべきか。一方習政権は文革時代を思わせるような弾圧を学者にも向けている。各有名大学の経済学者もこの対象でかなりの数の学者が教壇から追放されている。  
#自動運転を巡る技術窃盗に対する米国側の提訴 「30万件以上ものdata fileがcopyされ違法に持ち出された」と米テスラは元社員が技術を盗んだとして米加州の裁判所に提訴した。訴えられたのはテスラで自動運転の設計を担当していた元社員。1月に突然退社、中国で急成長する新興EVメーカー『小鵬汽車』に転職した。退職前にテスラの運転支援機能「オートパイロット」の設計図などのデータをcopyしたという。自動運転技術で有力なアップルの元社員も技術を持ち出し同じ会社に転職したとしてFBIが2019年に逮捕・起訴した。元社員は18年5月までアップルで自動運転プロジェクトを担当していた。退職前に知的財産として登録済みの情報や技術マニユアルなどを抜き取っていたと言う。元社員はやはり小鵬汽車に転職しており、同社は急成長企業としてしられている。米調査会社によると企業価値は36億5千万ドルで中国EVメーカーがこの会社を最大のユニコーンだとしている。小鵬汽車はテスラの提訴について「不正行為の疑いを認識していなかった、機密情報を不正に使うことはない」といっている。 成長市場と見込まれビッグデータの宝庫である自動運転技術の覇権を巡り米中は互いに譲らず激しい争いを続けている。本格的普及を前に各社は開発中の自動運転車の試験走行を公道でおこなっている。米加州のデータをみると中国企業の躍進がよくわかる。17/18年実績では上位15社の内5社を中国勢が占めた。しかも大半は設立間もない勢力だ。米国の関係者は「こんな短時間でベンチャーが自動運転技術を獲得できるはずがない」という。この開発拠点で働いていた中国人技術者も中国に次々帰国し自動運転の有力企業を次々設立していることはわかっている。米国が最近注目しているのは中国共産党による千人計画という高度人材の招致プログラムだ。海外の先進技術を中国に導入する狙いで10年前始まりすでに約8千人が認定された。高額の補助金や本国でのポスト提供など手厚い待遇が売りでFBIもこの認定対象者を監視の対象としている。GEから原発関連技術を持ち出したとしてFBIに逮捕された社員も千人計画の認定者であった。さてこの問題を単に米中の摩擦と論ずるのは簡単だが根本は現在の中国人が知財の認識を持っているか否かにある。おそらく知的財産としてpatentなどがあることを一般の中国人は知らないであろう。それらをコピーすることが倫理的に問題ありとすることにも気がつかないのではないだろうか。以前にも本稿で触れたが中国人の価値観の根本は「ルールなんて護ったら損、バレなきゃ良い、勝てば官軍、非を認めたら負け」にある。中国内にはドラエモンなど日本のアニメの類似商品が街にあふれている。ユニクロやマクドナルドそっくりな看板の店も沢山ある。密かな技術移転は工業製品から軍事技術にも及ぶと警戒されている。日本の特許庁の『模倣被害実態調査』によると中国がらみが圧倒的に多い。米議会では中国の軍事技術盗用への警戒感が蔓延している。一方、技術や知識など知的財産権の移転は何が許され、何が許されないのだろうか。
一つは安全保障上の観点だ。対立関係が潜む国家間では技術移転、スパイ行為は阻止の対象となる。『政治の論理』だ。別の視点は経済の論理』だ。経済を発展させ社会全体を豊かにさせる知的財産権の移転の形は何かが問題だ。市場経済のルールの基本は財産権の尊重にある。中国政府は米中交渉の中で外していた、外商投資法を急ごしらえで成立させ外国企業に技術移転の強制を禁ずる姿勢を示した。しかしキティちゃん、ドラえもんのそっくりさんが街にあふれている限り信頼は得がたい。いずれにしても知財権の知識を中国人が簡単に習得できるとは思えず、米中協議がこの点で停滞する恐れは十分ある。この話の発端は深センに本社を構え世界最大の通信機器ベンダーの副会長がカナダ司法当局により逮捕されたと言うものだが、ownerの娘で副会長兼CFOの孟が『米国によるイラクに対する制裁をくぐり抜け米金融機関に虚偽の説明をしたとして米国の要請を受けたカナダ司法当局により詐欺容疑で逮捕された。』と言うのが発端だが中国もこれに応じカナダ人を逮捕するなど騒ぎが大きくなった。但し冷静に見ると孟女史は何枚ものpassportを所持するなど明らかに中国当局のスパイそのものであることが判明した。その後の調査でイラクのフセイン政権、タリバン政権に通信機器を支援するとかイランでは反体制派の監視、イラン、シリア、北朝鮮などに輸出(規制中)した規制違反が問題となっている。 ファーウエイと同業のZTE製品についてはスパイ行為、サイバー攻撃のためのインフラの構築を行なっているとの調査結果を公表。両社の製品の米国の調達から排除した。いずれにしても一般中国人が知的財産権をある程度認識しない限り議論は進まないであろうし中国側もどのような議論に持ち込むのか時間がかかると思う。

           

 

 

 

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更新日:31/05/01