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中国ビジネスの行方 香港からの視点
再び動き出した万達集団
2019/7/1
湾仔
中国経済は引き続き低迷している。5月27日の国家統計局発表では中国工業部門企業利益は4月が前年同期比3.7%減となっている。需要の低迷と製造業の活動が低迷しているためだ。更に上がり続ける高賃金が問題だ。米中貿易戦争とマスコミが騒いでいるが中国側にはマスコミが騒ぐほどの材料もないので一時的な騒ぎで終わるかもしれない。習近平指導部は米国への対抗と愛国を国民に呼びかけているという。人民日報は〔中国企業と外資の技術協力は自ら望んで結んだ契約だ〕と技術移転の強制を否定する論評をだしている。技術移転の強制は中国側が一切否定し、米中協議の焦点の一つだ。習指導部は米中摩擦を長征になぞらえ長征の出発点を訪れ持久戦への備えを国民に求めたものとみられる。もともと、中華思想をかざし強国、大国意識を国民に宣伝したのでこの点から退くわけには行かない。習自身の独裁体制を更に強固な物とするためだが、これには異論もくすぶっている。厄介なことには米国に財産を持ち、親族や家族がいる人々だ。共産党の高官は子女を米国に留学させ、米国に多くの不動産を持つ、米中関係が緊張すれば直接的な打撃が及ぶ社会のエリート層でもあり発言力も大きい。本稿でも何回か取り上げたが中国での民間企業の中には実に賢明な経営方針と実行力を持った企業も多い。ところが企業が大きくなるにつれ共産党もその企業内に入り込み、独裁政権でもあるので、権力者に何とかよく思われたいという活動が昂じると社内のすべての部門が共産党の支配下にはいり、完全に国営企業化するケースがいくつもあった。本稿では大連万達集団について何回か取り上げたがその発想は実に見事で2012年、米映画館chainに続き豪州映画館chainを買収、さらにスペインのサッカーチームに出資、2016年ころからテーマパーク事業に参入(米国
デイズニーの中国版)、その前にNYCマンハッタン国連付近の地域を一括購入するなど実に見事な展開であった。目下のところ中国内では経済分野と軍事分野より先に中米関係が逆転しそうなのが技術分野だ。ファーウエイがイラン向けでルール違反をしていたことが、
米国政府の同社に対する追求の始まりだが、社員の中に共産党員は何千人もいるとのことで社会主義、自由経済の名の本に中国政府と特別な関係があるのでファーウエイは{何でもありの国営企業となっている}。2017になると政府の関係者も社内に跋扈し当局が銀行に万達への融資制限を要請し、今まで築き上げた13のテーマパーク
77のホテルを売却、2018年には中核事業会社の万達商業地産の株式14%をテンセントなどに売却。スペインのサッカーチーム株式を売却。中国内13ヶ所のテーマパークの運営権を同業に売却、2019年、百貨店37店を売却。積極的な海外投資が社内に入り込んだ共産党員の目にとまり更に習指導部とうまい関係を作るため万達が海外に過剰投資をしているとして銀行を指導して万達への融資制限を行なってみたり、折角築き上げたテーマパークや百貨店も手放さざるを得なくなった。ところがここに来て中南部と比べ有力企業の少ない東北地方は成長率も低く中国経済の足かせともなっている。そこで習近平自ら昨年9月に遼寧省など東北3省を訪れ民間企業との連携など経済の開放を進めるべしと檄をとばした。万達の創業者は軍出身だが、共産党と関係はなかった。ところが昨年あたりからすべての成功は共産党指導のお陰とか共産党に対する賛辞が次々と出るようになった。万達も何でもありの国営企業化してしまった。ここで万達も大型投資を相次ぎ発表しているが、それらは政府の東北振興策をなぞった形となっている。内陸部の甘粛省では3年間に年間で450億元を投じて商業施設やホテル、テーマパークを開業する。広東省でも内容は未定としているが200億元を投資する。内陸の狭西省延安では120億元を投じてテーマパークや(同地は中国建国前に毛沢東など党の幹部が一時拠点を置いていたので共産党革命の聖地とも呼ばれている)歴史や文化を学ぶ劇場などを作る計画もある。主力の商業施設、万達広場を全国に展開し中国の高度成長期とも重なり急成長した。上述の各種の買収総額は200億ドルをこえた。だが、中国当局は大型の海外買収に対し資本流出と人民元安との危機感を持つに至った。そこで当局は金融機関に対し万達への融資を制限するよう通達し、万達へは資産売却と借金返済を迫った。まさに国家資本主義だ。そこで万達は所有するすべてのホテルやテーマパーク、百貨店など1300億元以上の資産を売却した。
同社は中核事業会社の上場を廃止しており最終利益などは不明だが、18年12月期の売上高は2,142億元と2年間で16%減少、総資産も22%減少した。すべて社内に入り込んだ共産党員にやられた格好だが、今回1,600億元の投資計画を発表したが今回の計画は政治的な配慮が見え隠れする。「中国経済の減速を食い止めたい党の思惑に応える」ということだが、インターネット通販が猛威をふるっている。万達のテーマパーク事業も経済成長とともに伸びたが、人気のあるキャラクターがいないと言われ、テンセントやネット通販2位の京東集団から出資などの形で連携している。(一般には不動産大手は住宅投資に主力を置いている。)万達の場合、商業施設と住宅を組み合わせる方式だが、中国の場合、一社が成功すると他社も一斉に同じ業態に殺到するが、中国商業不動産大手の新城は2020年を目標に店舗を2倍の100ヶ所に増やす計画を発表した。新城の大型商業施設はユニクロも入っているので有名だ。新城の場合、万達から既に経営幹部が新城に移り万達の経営know―howを得たと言われているが、更に万達の債務膨張リスクなども見通ししているのかもしれない。いずれにせよ、急速に出店を拡大させる経営手法には不透明さも残している。
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