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孫崎享のPower Briefing

オバマ大統領の核政策

2010/10/27
 

孫崎 享
(twitter)

 8月7日広島原爆記念日は65回を迎え、ルース駐日大使と、国連の藩事務総長は各々駐日大使、国連事務総長として初めて出席した。これは何を意味するのか、核兵器問題は今後どう展開していくのか。
 核兵器問題は大別して二つある。一つは現在の非核兵器保有国が核兵器保有国になるのを阻止すること、今一つは核兵器保有国の行動をどう規制するかである。核兵器の不拡散は核拡散防止条約の発効(1970年)以来、国際社会の最重要課題の一つであった。今日も北朝鮮、及びイランの核兵器保有を阻止する動きは活発に行われている。
 次いで核兵器保有国の行動の規制については二つ主な方向がある。一つは超大国間での協議で、米ロ(ソ連)間戦略核兵器交渉である。この中にそろそろ中国も入る。今一つは核兵器を保有する超大国が、超大国以外の国に核兵器を使用するケースである。
 米国はロシア(ソ連)以外の国に対する核兵器の使用をどの様に考えてきたか。多くの人には驚きかも知れないが、使用を真剣に検討してきた。2006年10月ワシントンポストは朝鮮戦争に関し「1950年トルーマンは記者に対して(北朝鮮攻撃には)我々が持つ全ての兵器を含むと発言した」と報道した。
 また米国国家安全保障文書館(National Security Archive)(注1)は2006年7月「昨年ブッシュ・ホワイトハウスはイランの核施設に核兵器攻撃をすることを検討している徴候をみせ、米国国内に警戒感が出た。冷戦時代米国は地域紛争で核兵器を使用する道を模索してきた。ニクソン大統領等はベトナムで核兵器を使用する是非を検討した。」と報じた(注2)
 米国は過去常に核兵器の非保有国に対しても核兵器を使用する可能性を残してきた。こうした政策に対して、米国国内でも当然反対の動きがある。マクナマラ元国防長官等が是正するよう求めたが、変更されることはなかった。米国が核兵器の使用を模索している中で米国大使が広島の式典に出るのは難しかった。同様のことは国連事務総長にも言える。
 オバマ大統領になり流れが変わった。米国はイラン、北朝鮮の核保有に向けての動きを牽制している。これは従来どおりである。同時に自らの核兵器使用にも枠をはめた。具体的動きは「核態勢の見直し(NPR:Nuclear Posture Review)」である。2010年4月米国防省はNPRを発表し、その中で「米国はNPT加盟国で核不拡散義務を遵守している非核兵器国家に核兵器を使わず、使うと脅すことをしない」と宣言した(注3)。これは極めて画期的な決定だ。
 当然ながら米国内では様々な見解がある。「核態勢の見直し」は議論が白熱し、当初発表の予定が大幅に遅れた。軍部を中心に抵抗が強かった。
 ラスムッセン研究所は米国人の59%が「広島、長崎への原爆投下は正しく、謝罪の必要なし」としているとの世論調査を発表した(注4)。広島、長崎の原爆と米国の関係になると常に謝罪の問題が出る。しかし必要なのは核戦争の危険を削減することである。日本はオバマ大統領の謝罪を求めるのでなく、むしろ彼の核兵器廃絶に向けて彼が動きやすくすることが望ましい。

脚注  
注1 http://www.gwu.edu/~nsarchiv/ 
http://ja.wikipedia.org/wiki/アメリカ国家安全保障アーカイブ
注2 http://www.gwu.edu/~nsarchiv/NSAEBB/NSAEBB195/index.htm
注3 http://www.mod.go.jp/j/approach/agenda/meeting/seisakukaigi/pdf/12/1-3.pdf
注4 http://www.rasmussenreports.com/public_content/politics/general_politics/august_2010/
59_say_a_bombing_of_hiroshima_nagasaki_was_a_good_decision
   
   
   
 

 

 

 

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更新日:2012/09/15