11月23日、北朝鮮は韓国の延坪島を砲撃した。この行動は朝鮮戦争の休戦協定にも違反する行動だけに、国際社会に深刻な影響を与えたが、幾つかの視点を検討してみたい。
1:北朝鮮は何故この時期かかる行動にでたか
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北朝鮮は体制継続が円滑に出来るかに強い危機感を有している。三男の金正恩を後継者にする方向が出たが、長子相続の伝統の朝鮮社会で、金正恩後継を固めきれない状況にある。この中、北朝鮮は国内不安を利用し、西側・韓国は軍事的に体制変革に乗り出すのでないかとの危機感をつのらせている。金正恩周辺の軍人は国際感覚全くなく、ソ連・東欧圏との交流のあった時代より自己中心的考えである。
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海上での境界線には合意がない。1953年国連軍側は北方限界線を発表している。他方北朝鮮側は1999年海上軍事境界線を発表している。韓国の延坪島は双方の境界線の中にある。北朝鮮の砲撃前に実施された韓国演習では、この島よりの砲撃訓練が行われた模様であり、北朝鮮側は警戒心を従来以上に高めたとみられる。
2:米国側対応振り
米国の動向についてはワシントン・ポスト紙やニューヨーク・タイムズ紙が貴重な報道を行ったのでそれを中心に纏める。基本的には極めて慎重であるが、この背景には朝鮮半島問題で戦争に突入するのには反対という米国世論が存在する。
米国ではホワイトハウスでオバマ大統領出席の下、対応策が協議された。対抗措置として米韓合同演習実施を決議するも、その先の政策については「選択が難しい」との雰囲気であった。24日付ワシントン・ポスト紙は「米は韓国と合同演習。しかし良き選択ほとんどなし」の標題の下Pomfret論評を掲げ「合同演習を実施する。国際的非難を求める。米政府幹部は”北朝鮮の悪行に報酬を与えないが基本的哲学でこの哲学が米国の次の行動の基本哲学”と述べた。ホワイトハウスで協議を実施したが、対応策では今後は困難が予測される。米国は、韓国に自制要請した」(注1)と報じた。23日ニューヨーク・タイムズ紙はSanger論評を掲げ次の要旨の報道を行った。「米国の最初の反応は早く、合同演習の実施を決定した。米国原子力艦艇ジョージワシントンも演習に参加する。その他の幾つかの選択が検討された。非難決議は単なる言葉上に終わる危険がある。非軍事の制裁を強化することが北朝鮮の新たな軍事行動への抑止力になるかどうかは不透明である。軍事演習はある意味で象徴的であるが、より強い軍事的反応を考察する際には戦争を覚悟できるかが問われる。なお現在北には大規模な軍事衝突の用意はない。米高官は北朝鮮の悪行に対話、報酬で答えるという悪しきサイクルを絶つべしとの声が強い」(注2)。
3:中国の対応
中国は北朝鮮の砲撃事件をこの地域の緊張を高める行動であるとして、歓迎していない。一貫して、この事件に引き続き新たな緊張を阻止する方向で動いた。戴秉国国務委員は11月28日午前、ソウルで李明博韓国大統領と会談し、ここで朝鮮半島情勢の悪化防止に向けて協議した。米国は従来より「北朝鮮問題には影響力のある中国の関与が不可欠である」との見解を有していたが、この感をますます強めつつある。