TPPではかなり発言した。10月4日衆議院議員会館で「TPPを慎重に考える会」の会合で短い講演をした。11月5日、有楽町で国会議員と共に街宣車に乗り、演説もした。
何を訴えたか。プラスとマイナスのバランスがとれない。TPP賛成者の説明はほとんどが誤魔化しか、本質論を外して論議している。前原氏が外務大臣時代、シンポジウムで「1.5%(農業関係者)のために98.5%が犠牲になっている」と述べた。米倉経団連会長は「TPPに参加しないと日本は世界の孤児になる」(2010年10月26日富山市内のホテルでの記者会見)と述べた。いずれも詭弁の範疇に入る。
TPPは計24分野に及ぶ。電気通信、金融、投資、政府・地方公共団体の調達、知的財産権等国民生活のほとんど全てに及ぶ。この分野で働く多くの人に打撃を与える。
「TPPに参加しないと日本は世界の孤児になる」は完全な詭弁だ。「TPPに入り、世界の成長に乗る」も同じ類だ。
世界で最も成長するとして注目されたのはBRICSである。ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカがその国である。これらの国はTPPに入っていない。国際経済は過去先進国首脳会議G-8が引っ張った。今はG20、20ヶ国・地域首脳会合がより重要である。経済を促進するなら、これらの国と緊密な関係を持つのが筋である。でもTPP参加国でG20のメンバーは豪州だけだ。これで成長の契機になると言われても、疑問だ。
ASEANの代表的な国、インドネシア、タイ、フィリピンはTPPに入っていない。
こういうと「TPP参加国の最も重要な相手国は米国だ。米国との関係を強化すればそれでよい」という声が聞こえそうだ。米国の関税は今2%程度である。米国との自由貿易で、日本の輸出が増えることはない。
より重要なのは日本の輸出市場がどこかについて、正確な把握がない。
2010年日本の輸出相手国では、米国が15.3%、TPPに不参加
の中国・韓国・台湾・香港の合計は38.8でうち、中国は19.4%である。
問題はTPPに入ることによる被害である。
一つだけ医療の問題を取り上げたい。
日本医師会11月2日見解を発表し、その中で「TPPのイニシアティブをとる米国は、かねてより日本の医療に市場原理を導入することを求めてきた。2004
年の日米投資イニシアティブ報告書で、混合診療の全面解禁や医療への株式会社の参入を求め2011 年2
月の日米経済調和対話で、米国製薬メーカーの日本市場拡大のため、薬価算定ルール等に干渉した」と指摘し、TPPによる国民健康保険制度崩壊の懸念を表明した。
TPPの24分野それぞれに問題がある。基本は「これらの分野に米国基準を持ち込んだら日本社会が良くなるか」である。
TPPは余りに問題を抱えている。「米国に言われたから参加する」では情けない。議論を重ねるべきである。日本の将来が大きく左右される問題である。
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