ミサイル防衛が、突然政治の中心に踊り出た。きっかけは北朝鮮の“人工衛星打ち上げ”予告である。3月16日、北朝鮮は「人工衛星を打ち上げる」と発表した。実質的にこの技術は軍事ミサイルになる。
これに対して日本の対応策が次々と出された。3月30日 田中防衛大臣がミサイル防衛システムで迎撃する「破壊措置命令」を発令した。防衛省はイージス艦3隻を東シナ海と太平洋、日本海に展開し、地対空誘導弾パトリオット・ミサイル3を沖縄県内中心に配備した。
私達はミサイル防衛とは何か、どの程度機能するかを考えておかなければならない。
結論的にいうと、ミサイル防衛は機能しない。その理解は極めて簡単である。小学生でも、中学生でも解る。
弾道ミサイルは打ち上がると数百キロメートル以上の上空を飛ぶ。通常の地対空ミサイルや空対空ミサイルで迎撃できる高度はせいぜい数十km程度である。この段階では打ち落とせない。ミサイルは目標に向かって下降する。この時のスピードは大陸間弾道弾では秒速約7km、中距離弾道ミサイルで秒速約2km程度である。ミサイルの長さを20メートル位として、これが一秒に2km移動する。こんな物を撃ち落とせるはずがない。
これを野球とサッカーに例えて考えて見よう。
野球でピッチャーが時速150kmで投げる時は、秒速42メートルである。サッカーでペナルティを得てゴールに蹴る時は初速で秒速30メートルである。ミサイルが落下する時はピッチャーの球の50倍以上の速度である。こんなものを撃てるはずがない。
さらにバッターはホームプレートの上を通る球を打てばよい。しかし、ミサイルで東京を守るとなると、守る範囲は何十km四方である。守る事はありえない。
敵国がミサイルを撃つ時、目標がどこか解らない。北朝鮮が日本を攻撃するとして、それが東京を狙うのか、大阪を狙うのか、金沢を狙うのか。
東京を狙うとして、国会議事堂を狙うのか、防衛省のある市ヶ谷を狙うのか、銀座、新宿の繁華街を狙うのか、ビジネスセンターの丸の内を狙うのか。狙う場所が解らなければ軌道が解らない。どこを飛ぶか解らないミサイルをどう打ち落とすのか。
ミサイル防衛はそもそも、自分のミサイル発射拠点を守る上で意味があった。敵が核兵器攻撃する際には、報復されないようミサイル発射拠点を叩く。その際には、軌道を計算できる。
我々日本人が北朝鮮や中国のミサイルから防衛すると言った時に、人々が思うのは一般の日本人が活動している政治、経済、社会の中心地である。その時には敵はどこを狙うか解らない。目標が不明なら軌道を計算できない。軌道を計算できなければ打ち落とせない。
ミサイル防衛は全く役にたたない。ミサイル防衛は単なる戦争ごっこの玩具である。それも意味をなさない玩具である。
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