第65回 国際法務その31:知的財産法:国際的協力による保護
2012/1/1
国際法務で取り扱う「日本法」の「すべての事柄(everything)」を14種類(分野)に分類し、前回(第64回)からは、その10番目の分野である「移民法(貿易法)」に焦点を当て、この分野の検討(try to know something about everything)を連続する予定でしたが、その予定を変更し、今回は11番目の分野である知的財産法を取り上げることにしました。必要があれば、あとで前の各分野に戻ってくることとして、ひとまず、これら14種類(分野)の全体の概観を完了した方が良いと考えたからです。 この11番目の分野である知的財産法(intellectual property law)とは、いうまでもなく、知的財産権(intellectual property rights)に関する法律を指します。現在の日本において、主な(注1)知的財産権(知的所有権ともいいます。)は、大きく、つぎの3種類に分かれます(注2)。
3種類に分類
主な個別の権利
関係する官庁
産業財産権(工業所有権ともいいます。)
@特許権:A実用新案権:B意匠権:C商標権
経済産業省: 特許庁(注3)
著作権
@著作権:A著作隣接権:B著作者人格権
文部科学省: 文化庁(注4)
その他の知的財産権
@ 回路配置利用権: A 育成者権
@ は経済産業省(注5) : A は農林水産省(注6)
これらの日本の知的財産権は、あくまでも日本の法律に基づいて認められるものですから、日本で認められた日本の知的財産権が、そのまま日本以外の国(外国)で認められるものではありません。あくまでも、その外国の法律に基づいてその外国で認められる必要があります。これを各国(知的財産権)独立の原則といいます。つまり、それぞれの国で権利を主張するためには、その国ごとに個別に権利を取得する必要がある訳です。 それぞれの国ごとに個別に権利を取得しなければならない、という原則に立ちながら、そのような外国での権利の取得をより容易にするために、さまざまな国際的協力が行われています。たとえば、特許権に関しては、いわゆる国際出願制度があり、産業財産権に関しては、いわゆる優先権制度があり、著作権については、いわゆるマルCマーク制度があります。まず、特許権に関する国際出願制度(注7)とは、1個の「国際出願」をすることによって複数の外国に「特許出願」をしたと同様の効果を確保できる制度です。つぎに、産業財産権に関する優先権制度(注8)とは、日本で先に出願をした後に外国に出願した場合に、日本での出願日(優先日)を外国での出願日と見なす制度です。最後の著作権に関するマルCマーク制度(注9)とは、日本で著作者(著作権者)の氏名、著作物の公表年月日と一緒に、©を表示することによって、外国でも著作権が認められる制度です。
知的財産基本法(平成14年法律第122号)第2条第2項:この法律で「知的財産権」とは、特許権、実用新案権、育成者権、意匠権、著作権、商標権その他の知的財産に関して法令で定められた権利又は法律上保護される利益に係る権利をいう。
ウイキペデア:知的財産権:最終検索2011年12月31日
経済産業省ホームページ:産業財産権(工業所有権)の概要http://www.jpo.go.jp/seido/s_gaiyou/chizai02.htm:最終検索2011年12月31日
文化庁ホームページ:知的財産権についてhttp://www.bunka.go.jp/chosakuken/chitekizaisanken.html最終検索2011年12月31日
経済産業省ホームページ:産業財産権(工業所有権)の概要http://www.jpo.go.jp/seido/s_gaiyou/chizai02.htm:最終検索2011年12月31日→回路配置に関する法律の概要http://www.softic.or.jp/ic/ic-layout/houritsu/houritsu.html : 最終検索2011年12月31日
農林水産省品種登録ホームページhttp://www.hinsyu.maff.go.jp/最終検索2011年12月31日
ウイキペデア:特許協力条約に基づく国際出願等に関する法律:最終検索2011年12月31日
ウイキペデア:優先権:最終検索2011年12月31日
著作権のひろば:著作権表示の注意点http://cozylaw.com/copy/wadai/cm.htm最終検索2011年12月31日
© 2006 知財問屋 片岡秀太郎商店 更新日:2012/10/30