国際法務で取り扱う「日本法」の「すべての事柄(everything)」を14種類(分野)に分類し、今回は最後14番目の分野である消費者法(Consumer
protection law)を取り上げます(try to know something about
everything)。前回では、約25年以上も前に出版された故田中英夫教授および故竹内昭夫教授の共著である「法の実現における私人の役割」を取り上げましたが、その当時の日本では、管轄する治者としての行政庁が「何々業法」を根拠に業者を指導・監督・検査するという形で消費者保護が図られていたものでした。両教授は、むしろ消費者自身による訴訟を活用しているアメリカの制度を参考にすべきである、との主張を展開したのです。確かに、約2年前に出版されたFarhangのThe
Litigation State(注1)は、アメリカでは、「消費者保護(consumer
protection)を含むさまざまな公的規制(public
regulation)」が、「政府による訴追(governmental
prosecution)」よりも、むしろ「私人による訴訟(private
lawsuits)」によって執行されてきたこと(歴史)および現に執行されていること(実態)を明らかにしています。ところで、つい最近(2012年3月)、「ホンダの車が広告よりも燃費が悪かった」という理由で、約20万人のユーザーを代表する型の訴訟(クラス・アクション)において、ホンダがユーザー1人当たり最高200ドルを支払うとの和解が成立しています(注2)。現在の日本では、このような訴訟は有り得ません。わずか200ドル(約16,000円)程度の支払を求めて訴訟する人もいませんし、そのような人が約20万人を代表する方法もありません。ところが、2012年2月5日(日)の読売新聞(朝刊)のトップ記事によれば、近く日本でもこのような型の訴訟が可能になるようです。この記事の見出しには、「消費者被害を一括救済」、「新法制定へ」、「認定団体が訴訟代行」とあります。− 被害額が少なかったり、訴訟の負担が重かったりして、泣き寝入りしてしまうことが多い消費者被害を一括して救済するため、消費者庁は、特定適格消費者団体による訴訟代行の手続きに関する新法「集団的消費者被害回復法案(仮称)」を今国会に提出する方針を固めた(注3)
。施行は2013年度以降となる見通し。− とのことです。つまり、− 救済対象は、被害額数万円〜数百万円のトラブルを抱える消費者。英会話教室やエステで入会手続きをしたものの、途中で解約しても授業料や申込金の大半が返金されなかったり、ネット通販で購入した商品が粗悪品なのに代金返還に応じてもらえなかったり−などのケースが想定される。まず、新法に基づき、適格消費者団体の中から特定適格消費者団体を認定。これらの団体が消費者の訴えに基づいて業者に損害賠償請求訴訟を起こし、賠償を認めた判決が確定すると、インターネットなどで周知する。これを受け、同じ業者とのトラブルを抱える消費者が同団体に被害を届け出ると、裁判所が個別の審理により返金額を算出し、業者に返金を命じる仕組み。− ということです。
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