最近、大学卒の就職難がいろいろ言われているが、その真の理由の一つが見落とされているのではなかろうか。何故なら、メディアは全て世の中の不景気のせいにしている様に感じられるからである。
それは、最近の大学生の目に余るレベルの低さにある。このレベルの低下は過去からずっと続いていた現象ではあったが、それがいよいよ限界に近づいて来たということである。ひどいのは高校生並どころか、中学生並に等しい者もかなりいる。高校生レベルの微分、積分はおろか、分数すら分からぬ者もいるようだ。又、アルファベットの順序も分からず、辞書の引き方すら知らない者もいるという。
日本の大学の数は778校で、米国2629校に次ぐ数で、韓国407校、ドイツ370校、英国167校、フランス94校となって居り、数だけ見れば教育大国である。然し、最近の学力での大学ランキングでは、世界のトップ200校のうち日本は5校のみで、中国は10校で、米国、英国がトップクラスを占め、日本は昔に較べランクを大幅に落とし、東大の物理学等の一部の部門を除き中国や香港に負けている。
2009年春、四年制の大学の進学率が始めて50%を越えた。1965年には10人に1人、1990年には4人に1人であったものが、今や1人に1人以上が大卒ということになっている。少子化の影響もあるかも知れぬが、昔と違い学力も意欲もないのに、なんだかんだといっても経済力があるが故に親と子の見栄で、大学へ進学している者も多い。著者の友人の大学教授がいうには、レベルの低い大学の学生の勉学態度の悪さは想像以上にひどいもので、まともに講義を聴いている者は10%程度で、残りは携帯電話をいじったり、友人とお喋りしたり、物を食べたり、イヤホンで音楽を聴いていたりで、「学級崩壊」といわれる小学校よりもひどいという。宿題など与えても殆んどやってこない。そのため、真面目に講義をヤル気も失せてしまうといっている。今やレベルの低い大学では中学や高校の基礎教育のやり直しが中心で、本来の大学教育などとても出来る状況にないらしい。
現在、私大の40%が定員割れで、つまり受験勉強などしなくても名前さえ書けば合格するという。又、入学後も勉強意欲のない学生ほど退学率も高く、その分、授業料が減って学校側は困っているという。そのため、日本でアルバイト目的の中国人を中心とする外人留学生などをムリに取り込んでいる大学もある。
又、定員割れの大学では学生確保のため、1990年に「AO入試制度」を取り入れた。AOとは「アドミッション オフィス」の略で、一種の「入試事務局」で学科試験はなく、AO入試のスタッフが「総合評価」で判断し、入学の合否を判定している。昨年の全私大の入学者の10.5%がAO入試による入学者である。
企業側からすれば、大学卒と高校卒の生涯賃金の差は大きく、こんな低レベルな大学生を採用するのは一種の自殺行為であり、採用を手控えたり、優秀な外国人を採用する企業が増えるのも当然のことである。
かかる事情を無視して十肥一からげにして学卒の就職難を論じるのは、誤解の元となるのだ。実力並の高卒扱いとし人手不足の中小企業に就職させれば、真の学卒の就職率も大幅に改善されるであろう。因みに300人以下の中小企業の求人倍率は4.41である。又、企業側も学卒、高卒、中卒といった昔ながらの枠組みも再検討すべきであろう。これがある故にムリして大学へ行く遠因にもなっているとみている人もいる。
又、こんな大学と呼ぶには値しない低レベルの教育投資は国家的ロスであり、私学助成金などは、毎年の全国統一テストにより、あるレベル以上の学校に限るべきだ。
余談乍ら、ある教育界の人の話として、長い目で見ると真に能力のある人材は、優秀といわれている高校出身者に多いという。何故なら、高校入試に較べ大学入試の方が能力もさることながら、「入試テクニック」で入学した者がかなりいるからである。従而、大学卒といえども、どこの高校を出たのかも併せ考慮する必要があると。
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