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中国ビジネスの行方 香港からの視点
 

再び不動産リスクについて

2014/7/1

湾仔

 昨年の12月1日付けで不動産リスクは地方都市にも拡散と題して不動産バブルの様子を書いたがその後半年たって更に不動産を巡る問題点が次々と明るみに出て来ている。
 一般論としては北京・上海等大都市では価格上昇、地方都市は地方政府・デベロッパーによる過度の開発が裏目に出て住宅供給過剰が続いている。地方都市の供給過剰はもはや手の付けようのない状況だが大都市でも投機目的の消費者が住宅購入制限を掻い潜り、例えばわざと離婚するなどの方法で2戸以上を購入していたが、ここにきて資金難もあり大都市でも供給過剰が顕著となりつつある。前回はghost townの出現を書いたが、流石に中国人は目の付け所が良く、オルドス市のghost townを観光の目玉にしよう、などの珍案も出ているらしい。そこで今回はその後の不動産市場の動きを追ってみよう。

1.販促策
 不動産市場の減速を受け不動産デベロッパーは(頭金の立て替え払い)(頭金の分割払い)と言った販促策を打ち出しているという。これは不動産バブル抑制策として2戸目の住宅を購入する際、頭金の比率が高くなるのでデベロッパーが立て替えて需要を喚起しようとするものだ。実際に地方都市中心に行われていたが、ついに北京市でも頭金ゼロの販促が現れたと大騒ぎになった。政府も北京、上海、広東などではまだ不動産価格は上昇中と報じていたが上海の不動産研究機関の発表では全国主要35都市の住宅在庫は4月末で2億4,891万平方メートルとなり過去5年間で最大規模に膨れ上がったとしている。
 市況の軟化と買い手の様子見ムードで資金繰りの悪化と在庫圧力もあり不動産業者は何とかして売り抜けようと必死になっている。浙江省の温州市とか杭州市等住宅価格の下落がはっきりしているところはいよいよ地方政府もバブル崩壊の予防へと政策転換を急いでいる。

2地方政府も値下げ防止に走る
 杭州市は公式統計でも不動産価格の下落幅が全中国で1番とのことで当局の介入がなければ下落スパイラルは止められなくなっているようだ。政府は届け出ていた価格の15%以上の値下げは認めないとの価格統制策を打ち出した。自由経済圏から見ると変な話だが、杭州以外でも同じような動きが出ている。4月の統計局の発表では全国70都市の不動産価格調査で新設住宅の価格は3月より4都市多い8都市で前月比マイナスとなっている。横ばいが8都市多い18都市となっている。政府発表は小出しではあるが全国規模で下落が始まっていると見てよい。北京では汚職退治の影響か上級官僚が投資用に買ったアパートの売却が拡大して北京市の住宅在庫は最近数か月で2万戸増え7.5万戸となっている。流石に大手不動産業界からは資金繰りの悪化もあって悲鳴が聞こえてくる。香港の李嘉誠一族など中国不動産から手を引いたとの情報に次ぎ、香港の大手デベロッパー・ハンルンの会長は本土不動産市場は冬の始まりで春がいつ来るか分からないと話している。不動産の販売停滞は経済不安に直結するが、地方政府の収入が不動産借地権の売却で成り立っているので不動産業の冷え込みは甚大な影響を齎す。

3.銀行も住宅価格暴落に備え準備を進める
 全国の金融機関は2013年末時点で9兆人民元(約151兆3,000億円)規模の個人向け住宅ローンの貸出残高を抱えていたが不動産在庫が捌ききれない以上、政府債務よりリスクは高いとみている。政府系シンクタンクも具体的なリスク対策は明らかにしていないが「金融機関は価格の暴落に備えた準備を進めている」との曖昧な表現ながら過剰供給問題を認めている。地方の幽霊マンションは地方政府、銀行、国有企業が購入してバランスを取っているようだと英エコノミストは報じている。
 勿論これに対し、大都市での旺盛な需要が牽引する形で穏やかな上昇を続けるとする不動産業者や大学の研究所などもあるが全般的にバブル崩壊を予測する情報が随所に現れ出した。

4.動きの取れない地方政府
 2013年末の中央政府の債務は12兆元、地方政府は18兆元と政府は発表している。これは2012年GDPの60%にもなるが、長い間の「経済成長は全てに優先する」とした成長の陰の部分(借金経済)がここにきて裏目に出つつある。地方政府は農地を安値で買い上げ都市部の宅地や商業地としてデベロッパーに使用権を転売するという土地頼みであったことは良く知られている。国有企業と地方政府の投資拡大が経済成長のエンジンであった。ところがその資金はシャドーバンクからの調達であったことも明白となった。本稿では地方政府の債務問題、金融システムについての解説は将来に譲るが、中国の特殊な信用バブルは当局の規制が産んだものと言える。人民銀行と監督当局が銀行融資で規制すると「規制外金融市場」が大きく膨れた訳で長い間のウミがここにたまったとみても良いだろう。問題は中央政府から景気刺激策として予算の早期遂行を求められているが、資金難で身動きが取れない。

5.不動産バブルの崩壊はどのようにして起こるか
 先進国のバブル崩壊は銀行の不良債権増大による銀行自身の崩壊によるもので、国からの資本増強など一種の国営化によってバブル処理をしてきた。中国の場合、国営銀行が圧倒的に強いので国営化のプロセスは不要だが、膨大な不良債権を国が処理する必要がある。既に2007,2011年に一部バブルの処理があったが、国の財政が健全なうちは良いが、軍備増強など色々な問題があり、巨額の債務を何時までも消し込むことは不可能だ。一方不動産バブルの引き金として最近話題となっているのが外国のファンドや投資家が資金を引き揚げるケースだ。欧米の金融機関は既に中国の銀行株を売っている。更に中国人は商売センスが並外れていると言うべきなのか中国の大手不動産業は国内向けから海外投資に転じ欧米各地に豪華マンションをつくったり、ニューヨークで豪華物件を購入したり(One Manhattan PlazaとかWall streetのGMビルも購入)更には不動産から娯楽産業への転換を計ったりしている。勿論中国政府はこの動きを察して安定した経済成長と構造改革を盛んに謳っている。但し改革が遅れれば人民元の暴落を伴う資本逃避が起こるであろうし、その影響は計り知れない。
 いずれにしても習政権には制度改革以外に抜け道はない。


以上


 

 

 

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更新日:2014/07/01