知財問屋 片岡秀太郎商店  会員登録(無料)
  chizai-tank.com お問い合わせ
HOME 右脳インタビュー 法考古学と税考古学の広場 孫崎享のPower Briefing 原田靖博の内外金融雑感 特設コーナー about us  
 

大塚正民の考古学と考古学の広場

105回 第2版国際法務シリーズ:第2版国際法務その4:租税法その1:税務調査

2015/5/1

大塚 正民

大塚正民 法律会計事務所
 

今度の第2版国際法務シリーズで第3番目に取り上げる「法律分野」は、旧版(第41回から第44回)と同じく、租税法Tax Law: Tです。
国税通則法が2011年(平成23年)に改正され、「第7章の2 国税の調査」という新しい章の下に新しい条文が設けられました。国税通則法第74条の⒉から第74条の14までの12個の新条文です。そもそも課税庁が行う納税義務に関する調査には2種類のものがあります。いわゆる強制調査としての「査察手続」といわゆる任意調査としての「税務調査手続」の2つです。前者の査察手続は「国税犯則取締法(1)」という法律による規制がありますが、後者の税務調査手続には、これまではこれといった法律が存在せず、すべて課税庁の裁量に委ねられていたのです(2)。2011年(平成23年)の国税通則法の改正は、この税務調査手続をこれまでの「課税庁の裁量」から解放し「法律による規制」に服させる目的を持っています(3)。明文化された法律による規制として、つぎの6点が重要です。
第1点 原則として、調査の「事前通知」をしなければならない(第74条の9)。 
第2点 例外として、「事前通知」をしなくても良い場合が限定的に列挙されている(第74条の10)。
第3点 「事前通知」の項目が明示的に列挙されている(第74条の9第1項第1号から第7号)。
第4点 「事前通知」の相手方は「納税者」と「税務代理人(税理士または通知弁護士)」である(第74条の9)。
第5点 調査の結果、問題がないときは、その旨を「書面により通知」する(第74条の11第1項)。
第6点 調査の結果、問題があるときは、その「内容、理由、金額」を説明する(第74条の11第2項)。

脚注
 
注1

国税犯則取締法(明治33年3月17日法律第67号)は、原則として、裁判官の事前許可を得ることを要求しています。  

注2

2011年(平成23年)の国税通則法の改正前には、つぎのような考え方が一般的でした。たとえば、大阪地裁昭和45年(1970年)9月22日判決、行集21巻9号1148頁は、つぎのように判示しています。− そもそも・・・(任意)調査とは、・・・課税庁の証拠資料の収集、証拠の評価あるいは経験則を通じての要件事実の認定、租税法その他の法令の解釈適用を経て更正処分に至るまでの思考、判断を含むきわめて包括的な概念である。そしてかかる(任意)調査の方法、時期など具体的な手続的規定は全く設けられていないから、その手続面に関しては課税庁に広範な裁量権が認められていると解すべきであり・・・ −

注3

この点は、国税庁長官も明言しているところです。たとえば、「国税通則法第7章の2(国税の調査)関係通達の制定について(法令解釈通達)」という国税庁長官から各国税局長などに宛てられた平成24年9月12日付けの通達(平成26年4月3日に一部改正)においては、「調査手続に関する現行の運用上の取扱いが法令上明確化されたことに伴い、・・・法定化された調査手続を遵守する・・・」ことが強調されており、同じく国税庁長官から各国税局長などに宛てられた平成24年9月12日付けの通達(平成26年4月3日に一部改正)である「調査手続の実施に当たっての基本的な考え方等について(事務運営指針)」においても、同様の趣旨が述べられています。

   
   
   
   


大塚正民弁護士へのご質問は、こちらからお願い致します。  <質問する

  質問コーナー(FAQ)
  

ご質問は、編集部の判断によって、プライバシー等十分配慮した上で、一部修正・加筆後、サイトへ掲載させて戴く場合がございますので、予めご了承ください。

本メールの交換はすべて編集部を介して行われます。

すべてのメールには、お返事できない場合もございます。ご了承下さい。

 

 

 

chizai-tank.com

  © 2006 知財問屋 片岡秀太郎商店

更新日:2015/05/01